アクマイザー

スウィートプラン3


「とにかく器物損壊活動は駄目ですから」
帰る前に念を押しておかねばならんと、シュラが先輩二人にきっぱりと宣告する。
しかし、二人とも不服そうであった。
「だからタナトスだけ相手にすりゃいいだろう」
返されたカノンの言い分を、シュラはぴしりと切り捨てた。
「同じ事です。神相手の戦闘となったら、この一帯ただではすまない」
それに、とシュラは続けた。
「理由もなく挑みかかったりしたら、サガはタナトス側につくと思いますよ」
うっとカノンとアイオロスが怯む。
サガは聖戦後のタナトスを、まだ静養が必要なレベルの身体だと思っている。実際、死の神として完全復活に到る回復を遂げるのは、まだ何百年も先のことになるのだろう。そんな不調の相手へ拳を向けるなど、病人に手を上げるようなもので、とんでもない事だとサガは言うに違いない。
現状でも充分黄金聖闘士の力を凌駕しているにも関わらずだ。
「では、どう妨害すればいいってんだ」
いらいらと腕を組むカノンへ、アイオロスが口を開いた。
「外出ではなく、外泊を止めればいいんだよな?」
カノンが目をぱちくりとさせてから、そうだなと返す。
アイオロスはカノンの肯定を確認してから言葉を続けた。
「どこに泊まるのか聞いてるよね。とりあえずそのホテルに先回りしてみないか。このまま尾行していても埒があかないだろう」
「なるほど」
頷いたカノンは、帰ろうとしていたシュラの服をしっかりと掴んだ。アイオロスもいつのまにかシュラの肩に手を置いてにこにこと微笑む。
「「早速行くぞ、シュラ」」
テレポート体勢に入った二人に強制的に捕えられ、シュラは異議を唱える間もなく引きずられるようにホテルへの道連れとされていた。


サガの話していたホテルへ到着してみると、そこは超高級というほどのものではなく、庶民にもなんとか手が届くレベルの近代高層ホテルであった。
三人は顔を見合わせた。
「意外だな。タナトスなら一見さんお断りくらいの、格式あるホテルを用意してくるかと思ったのに」
アイオロスが言えば
「ハーデスをバックアップする企業群の系列のホテルがありそうなもんだが」
と、カノンも首を傾げる。
「私事でハーデスの持つホテルを使うわけにはいかなかったのではないだろうか…冥界も敗戦で物入りだろうし…」
一番常識的な(所帯臭い)発想で予測をたてたのはシュラだ。
しかし判らない事を考えても仕方が無い。
とりあえず二名+道連れ一名は智恵を絞ることにした。
「確かスイートルームに泊まるって話だったよね、カノン」
「ああ、最上階の部屋だ」
「俺たちも近くに部屋を取るというのはどうだろう」
アイオロスの提案に、二人が怪訝な顔をする。
「そんな近くでは、サガやタナトスに見つからないだろうか」
疑問をぶつけたシュラへ、アイオロスが答える。
「だからさ。サガはオレ達が近くにいると知れば、少なくとも…その、タナトスと同じ布団で寝ないんじゃないのかな」
遠まわしな表現だが、つまり自分達がいれば羞恥心が湧いてタナトスと夜の営みを避けるんじゃないかという事をアイオロスは言っているのだった。
カノンが手をぽんと叩く。
「なるほど、平和的だし無難だな」
シュラもしぶしぶ頷く。
「それならまあ…範疇内の作戦かと」
黄金聖闘士としての誇りの範疇内からは、億万光年くらい遠くかけ離れた作戦ではあるが、何とかシュラも妥協できる案だ。

早速三人は近くのネットカフェで、まずホテルの予約プランと部屋状況を調べてみる。しかし検索で出てきたのは
『カップル限定格安スイートルームプラン』
の表記だった。

(2008/8/31)


[NEXT]


[BACK]
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -