アクマイザー

この手で奪い、この手で与える
(お題配布:LC双子同盟さま)


「お前は俺から色々なものを奪った」
アスプロスがぼそりと呟いた。デフテロスは黙ってそれを聞いている。
「安息の日々も、双子座の聖衣も、命さえもだ」
うつむいたデフテロスの顔が、少しだけ泣きそうに歪む。
(…すまない。全部返すから)
答えようとして、言葉に詰まる。
聖衣と命は何とか返すことができた…と思うけれども、安息の日々とやらはどうか。奪ってしまった過去は戻らないのだ。
アスプロスはフンと鼻であしらう。
「返してもらうのは当然。もともと俺のものなのだからな。悪いと思っているのなら、俺のものを返すだけでなく、お前のものを差し出して謝意をみせろ」
デフテロスは考えこむ。差し出せるようなものなどあったろうか。
考えても、何も思い浮かばない。
「渡せるようなものを、俺は持っていない」
しかしアスプロスはそんな言い分を聞き入れなかった。
「いいや、あるだろう。俺の死んだあと手に入れたものが」
弟へ視線を合わせぬまま、自分の髪を指先に巻いてくるりくるりと弄んでは、ほどくことを繰り返している
「火星宮の戦いで、お前は『俺はもう、ただ俺だ』と叫んだな。このアスプロスの影でも付属物でも所有物でもないというのならば、お前自身のお前を寄越せ」
傲岸不遜なアスプロスの言い分に、デフテロスは先ほどまでよりも何倍も泣きそうな、困ったような顔をして兄を見上げた。

(2010/3/13)

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