アクマイザー

捩れたカルマ1



「カノンは強いだろう?」
漆黒に輝く冥衣を身にまとい、サガはラダマンティスに笑いかけた。
「嬉しそうに言うな。奴の采配のお陰で聖域の防御に隙がない」
翼竜は苦虫を噛み潰したような顔をしている。だがサガの表情をみて苦笑した。
「さすがお前の弟だ」
「アレはしぶといからな。搦め手も厭わぬゆえ、正道に偏るきらいのあるアイオロスの戦略の細部を、上手くフォローしている」
そう言いながら、サガはラダマンティスの首に腕を回した。
「ラダマンティス、今のお前ではまだカノンに敵うまいよ」
「だから嬉しそうに言うなと…オレの技量を見くびっているのか」
ラダマンティスは呆れたようにサガの腰へと手を回す。
「いいや、お前はわたしが見込んだ男だ。わたしが鍛えれば、カノンと相打つほどには戦えるようになるだろう」
それでも相打ちなのかとムっとしかけた翼竜の口をサガの唇が塞ぐ。
吐息が重なり、そして優しく離れる。
「聖域にはいくつか防御の浅いルートがある。そしてわたしは弟のクセを熟知している。撹乱用の雑兵を何名かもらえれば、十二宮までたどり着くのは容易いだろう。ただ、問題はその後だ」
サガは恋人の冥衣へ寄りかかりながら、薄く笑った。
「多少、荒っぽい手を使うことになるが、教皇を…アイオロスをおびき出す。頭を先に叩けばいい。司令塔がなければ、黄金聖闘士は連携が苦手だ」
「お前…」
じ、と元ジェミニの黄金聖闘士を軽く睨みつつ、ラダマンティスが言う。
「理屈をつけて、あのアイオロスとかいう教皇とやりあいたいだけだろう」
サガは、邪気なくみえる表情で首を傾げる。
「13年前は、聖闘士としてのわたしが全力での攻撃を己に封じた。それゆえの不覚を晴らしたいと思うのは、当然の願いだとは思わないか?」
当たり前のように話すサガを、ラダマンティスが抱き込む。
「時折、あの男に妬けるぞ」
「お前こそ、カノンばかり見ているではないか。おあいこだ」
二人は見つめあい、互いに笑うと、もう1度啄ばむだけのキスをした

2008/5/2


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