アクマイザー

海龍サガ2




「兄さん、ちょっとオレの代わりに冥界へ行ってくれないか?」

突然弟に手を合わされて、サガは怪訝な顔をした。それまではソファーにもたれ、古文書に目を通していたのだが、肩をすくめて向き直り、カノンを見上げる。
「頼む前にまず、事情を説明してくれ」
カノンは頷いて向かいの椅子へと腰を下ろした。

「まあ…海界にも三界の和平に不満のある不穏分子がいるわけだ」
「ふむ、それはどの界にも少なからず過激派はいるだろう。それを抑え、まとめるのが海将軍筆頭であるお前の役割ではないのか?」
「ああ、そうなのだが、オレが居るときには却って用心するのか地下へ潜伏化してしまってな。それで、オレが暫く冥界での交渉で留守であるという状況を作りたいのだ」
「なるほど、私がお前の振りをして冥界へ向かい、その間にお前がその連中の尻尾を掴むという心算か」
「ご明察」
サガは、カノンの言葉にますます呆れたように肩をすくめた。
「そういった海界の内情を聖域の黄金聖闘士に明かすとは、お前はバカなのか?しかも公私混同だ」
しかし、カノンは口の端を歪めてニヤリと笑った。
「この程度、内情のうちに入らないさ。それに…」
「それに?」
「ポセイドン様も、またサガが海龍の鱗衣を着たところを見たいそうだ」
「何だ、それは」
目をぱちくりとさせているサガに、カノンはにこにこと続ける。
「むしろ、ポセイドン様的には、こちらが本題かな?」
「思いっきり公私混同だろう!そんな理由であれば断る!」
眉間にしわを寄せて言い放った兄へ、カノンはワザとらしくがっかりした様相を見せた。
「そうか。では残念だが不穏分子の件はまたの機会にして、オレが冥界に行くからいい。そういえば冥界側の交渉相手は翼竜なんだが、滞在中はずっとアイツの城に泊めてくれるんだってさ」
ラダマンティスの城に泊まるという内容を聞いた途端、サガは言葉を詰まらせた。かの冥界の重鎮が、弟に対して行き過ぎた熱いライバル心を燃やしていることは耳にしている。
カノンを同じ屋根の下に送り出すのは、兄としてためらわれた。
「…私が行く」
「ありがとう兄さん。あ、交渉内容はもうほぼまとまってるので、適当に時間稼ぎをして調印してきてくれれば良いから」
ケロリと言い放つ海将軍筆頭の言葉を聞いて、真面目に偽教皇を務めてきたサガは額に手を当てて嘆息した。
「そんないい加減なことで大丈夫なのか、海界は」
カノンは兄に手を伸ばすと、その髪をクシャッと撫でる。
「ふふ、心配だったら海界へ来てくれ。いつでも指南役として迎える用意はある。でもまあ、冥界との交渉で海界に不利な事をしようとしても、鱗衣を着ている間は、海神の監視付だから無駄だぜ?」

海界による双子座の兄のスカウト計画は、懲りずにまだまだ続いていたのだった。

(−2007/2/20−)

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