アクマイザー

アンチウイルス


◆スキャンディスク


「シュラ、入浴の時間だ」
サガが仕事の手を止めて、俺に声を掛ける。
彼を洗うのは俺の仕事だ。隈なくすみずみまで彼の身体を調べ、汚れは洗い落とし、ウイルスなどの瑕疵があれば手当てを行う。
サガは元々綺麗好きかつ整頓好きで、暇さえあればデフラグをしている。やりすぎはディスク装置の寿命を縮めるような気もするのだが、そこは神業ともいえる手管で、彼の手にかかると無駄な空き容量やファイルの断片化が全く発生しない。
デスクトップには使われていないアイコンなど1つもないし、ディスククリーンアップは万全だし、保存データは外部記憶媒体へ残しているため、彼はいつでも出荷時とかわらない美しさだ。その彼の身体へこうして触れる事が出来るのは、セキュリティソフトの特権かもしれない。
サガがゆっくりと力を抜き、普段は隠された内部までを俺の前へとさらけ出す。そして俺は丁寧に彼を洗っていく。クイックスキャンという方法もあるが、サガはいつでもじっくりと時間をかけて入浴をする。入浴の間だけは彼の処理速度も多少落ちるため、けだるげな肢体をさらしつつ俺だけを相手にする。
ネット散策の際にくっついてきたと思われるいくつかのTracking Cookieの埃を洗い流し、今日もカルテに問題なしとの記載を残した。サガの身体で俺の知らぬ箇所など無い。
長い入浴を終えるとサガはまた服をまとい、多少の恥じらいを浮かばせた顔で「ありがとう」と言う。そして、その後は何事も無かったかのようにさっぱりと仕事に戻る。
サガがずっと俺を護衛にしてくれれば良いのにと、今日も思う。

2009/5/24

[濃パラレル系]


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