アクマイザー

JUNK2008


◆足縛る鎖

隣で眠るサガを見た。
布団の中でもぞもぞと手を動かすと、すぐにサガの手を探り当てる事が出来た。
この手を掴んでサガを叩き起こして、聖域を出ようと誘ったら聞き入れてくれるだろうか。
いいや、サガは困った顔をするだけだろう。
そして聞き返すのだ。
「何故?」と。
それは『何故聖域を出るのか』ではなく『何故その気もないのに私を試すのだ』という意味なのだ。
サガはオレのことを良く判っている。だから知っているのだ。
サガが聖域を出ない理由を、オレも理解してしまったことを。
13年前にサガが捨てられなかったのは、聖域ではなく、責任と義務なのだ。
強者として黄金聖闘士として、地上を守る務めを投げ出す事は、サガには出来なかったのだ。
逆にいま、もしもサガが「全てを捨てて私と逃げよう」と囁いても、それをオレは受け入れる事が出来ない。己のしでかしたことや、己のすべき事を鑑みれば、それはどうしたって出来ないのだ。
サガを捕まえていると思っていた聖域の鎖は、オレの足にも巻きついていた。
鎖は大地へと繋がり、人は大地を踏みしめる。他人との関わりの中で生きていく。
それが人の世界で暮らすという事だ。
その事を、昔のオレは理解できなかった。

それでも、サガと二人だけの世界へ行きたいと思う事がある。
そんな時にはここが終着点だったのだと思う事にしている。

もしも、オレ達が俗社会で神だの聖闘士だの知らずに暮らしていたら。
世間は必ずオレとサガを引き離そうとしただろう。
オレがサガを手に入れようとすることなど、道徳とやらが絶対に許さない。
外にいたら外にいたで「世界を捨て二人だけの聖域へ行きたい」と願っていたに違いないのだ。

互い以外に繋がる鎖があるということへの不満はあるが、聖域がサガを捕まえておいてくれるのならば、オレはその心を手に入れる事に専念しよう。
サガはここから逃げる事が出来ないのだから。


2008/12/28

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