アクマイザー

JUNK2008


◆趣味の相違

「久方ぶりのデートだというのに、何が不満なのだ」
珍しく己の決定へ難色を示すサガをみて、タナトスは首を傾げた。
地上で映画を見ると言い出したタナトスへ、サガは喜んでついてき筈だ。それなのに、タイトルを聞くと突然態度が変わったのだ。映画館はもう目の前であるにも関わらず。
サガは本質的に神を神とも思わぬところがあるが、白サガと呼ばれるサガの半魂はその性質を心の奥に押し篭め、決してタナトスの意思に逆らうような発言はしない(女神と地上の平和関連以外でという限定付きで)。
そのため、タナトスとしては理由が判らず、サガへ意向を問い質してみたというわけだ。
「デ…デートだからだ!何故2時間も、ただ人が死んでいくだけのスプラッタ映画を見なければならないのだ!」
サガの言い分は尤もであったが、タナトスには通じない。
「人間の文化などどれも低俗だが、見てみると結構面白いものだぞ。死に方にもバリエーションがあって」
死の神タナトスにとって、死は単なる現象だ。今まで数多の人間の命を消してきたものの、それは命の終焉にすぎず、それを娯楽に絡めたB級映画での派手な血飛沫や言動が新鮮であった。
しかしサガの方も引かなかった。
目に付いた本屋へタナトスの手を引いて飛び込み、なにやらそこで絵本の棚を漁っていると思ったら、探し出したのは『自殺うさぎの本』。それはうさぎが様々な自殺バリエーションを実行するシュールな海外絵本だった。
「今日はこれで我慢してくれ」
「………」
「映画の選択肢は、スリラーまでなら妥協する」
「………」
恐怖映画とスリラーは全くジャンルが違うのだが、サガにあまり区別はついていない。仕方なくタナトスはサガの購入した絵本を小脇に、鑑賞する映画を変更することとなった。
けれども、スリラーはスリラーで派手な暴力シーンが多く、意外とタナトスは満足したのだった。


2008/12/17

[NEXT] / [JUNK]


[BACK]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -