アクマイザー

JUNK2008


◆化学反応

向かい合わせに二人で座るデスマスクとカノンの前には、それぞれスープ皿が置かれている。中にはよそいたての野菜スープが、温かそうに湯気をたてていた。
デスマスクが呟いた。
「思うにサガは、一生懸命やりすぎるんじゃねえの?」
「一生懸命なのは良いことだろう」
「無意識に渾身の小宇宙を篭めすぎて、食材が化学反応を起こすのではないかと思っているんだが…」
「人の兄の料理に文句つけるなら食うな」
そう言ってカノンはスプーンをスープ皿に突っ込んでいる。
普通にそれを口へ運んだカノンの男気に、デスマスクは感心した。
「毎日食ってるのか、サガの料理」
「毎日ではないな。オレが作ることもあるし、従者が用意する事もある。サガも忙しいし、こうして手作りで朝食を揃えてくれる日というのは、なかなか貴重なのだ」
「だから尚更サガが一生懸命やりすぎるわけだな」
「黙って食えよ」
そんなやりとりをしていると、サガが台所の方から焼きたてのパン(らしき焦げたもの)を小皿に積み上げて持ってきた。テーブルへそれを置くと、神妙な顔でカノンに尋ねている。
「味はどうだろうか」
「まあまあだ」
そっけなく答える双子の弟へ、それでもサガは嬉しそうに『お代わりもあるぞ』などと告げている。
デスマスクは自分も一口スープを啜り、痺れた舌先でカノンの愛の深さを実感することになった。


2008/12/15
サガが自分の作ったものを味見する時は、自分の小宇宙を通しているので普通の味に感じてしまい気づかない…という裏設定付き。

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