アクマイザー

JUNK2008


◆死人がえり

兄さんがチラリとこちらを見て、オレと目が合うと慌てて視線を逸らした。
そして自分を恥じるように拳を握り締めている。
隠そうとしても、オレにはサガが何を感じているのか手に取るようにわかる。
サガは飢えているのだ。オレを食べたくて仕方がないのだ。
オレの肉を食み、脳髄を啜り、吸い尽くしたくてたまらないのだ。
サガは飛びぬけて意思の力が強いので、そんな本能を必死に抑えている。
死人である兄さんを勝手に冥界から連れ出してみたものの、そんなに簡単に生死の境を反故にすることは出来なくて、地上についてみたらサガはゾンビと呼ばれる存在になっていた。
見た目は変わらないので、オレは気にしない。
サガになら食われてもいいと思う。いやむしろ積極的に食われたい。
サガがオレの肉を咀嚼して内臓へ顔を突っ込むのを想像すると、それだけで至福を感じる。
しかし、それを許したらオレもゾンビとなってしまう。
サガは別の生者を求め、オレもサガ以外の人間を襲おうとするだろう。
そんなのはごめんだ。サガはオレだけを見て、それを恥じていればいいのだ。
だから、食われてやるわけにはいかない。
「サガ、味見だけならいいんだぜ?」
そう言ってやると、サガはそろりとオレに手を伸ばし、すまなそうに舌を頬へと這わせる。味わうようにゆっくりと。
このままでもいいんじゃないかとオレは思う。


2008/11/16

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