アクマイザー

JUNK2008


◆対処法

「起きろ、カノン」
まだ早朝だというのに、オレを起こすサガの声が上から降ってくる。
「仕事で遅かったのだ、もう少し寝かせろ…」
海界での任務でほぼ朝帰りとなったオレは、数刻前に眠りに付いたばかりだ。それを知っている筈なのに兄は容赦ない。随分な仕打ちだと思って薄目をあけると、そこに見えたのは黒髪のほうのサガだった。どうりで。
「お前が起きぬと朝の支度をするものがいない」
しかもこんな事を言っている。
「自分で考えてなんとかしろ」
オレはもう1度布団を被った。
黒くなったサガは偽教皇時代を経て、朝食や身の回りの事を誰かがやってくれる事に慣れすぎている。少しは生活能力をつけさせねばならんと判断したオレは、心を鬼にして黒サガを無視した。
被った布団ごしに戸惑うような黒サガの気配を感じたが、暫くすると「そうか」という声がして、その気配は部屋を出て行った。それだけでなくどうやら双児宮自体を出て行ったらしい。食材でも買いに行ったのだろう。

ま、もう少ししたら台所へ様子を見に行ってやってもいい。
アイツがどんな物を作ろうとするか興味もある。ド下手かもしれんが、オレの分まで作るくらいの配慮は見せて欲しいもんだ。
…なんて事を思っていたら、直ぐにサガが双児宮に戻ってきた。
それも知らない気配を連れて。
この、小宇宙を隠す事も出来ない弱っちい存在感は雑兵に違いない。
オレは慌てて布団から飛び起きた。
寝衣から着替える間も惜しんで入り口の方へ行くと、予測どおりまだ若そうな雑兵と黒サガがいて、雑兵はニコニコとオレに頭を下げてから台所の方へ入って行った。

「……オイ…オレにどういう事か説明しろ」
思わず半眼でサガを睨む。
「自分で考えて何とかしろと言ったではないか」
対して黒サガはオレの不満に全く気づいていないらしい。
言われたとおりに、しかし自分に都合よく判断したようだ。
「それゆえ、道を歩いていた者に頼んだ。お前達がいつも煩いので、精一杯丁寧に言ったのだぞ」
「…ちなみにどう頼んだのだ」
「私の為に食事を作ってくれないか」
「………」
「喜んで作ってくれるそうだから、連れてきた」
「何だそのプロポーズのような言い回しは!!!!」

どうりで雑兵が嬉しそうだったわけだ。
その後の食卓には妙に豪華な朝食と、見た事もない雑兵が一緒に並び、オレはどう黒サガに説教したものか考えながら溜息をついた。


2008/9/27

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