アクマイザー

JUNK2008


◆平和な相克

テーブルに並べられた朝食を前にして、サガが額を押さえ、なにやら眉間にしわを寄せている。
台所から戻ったカノンはそれに気づき、ギリシア珈琲の入ったカップをテーブルの上へ追加しながら、兄へ気遣いの声をかけた。
「どうしたのだサガ、気分でも悪いのか」
「なんでもない…いや、隠すような事でもないか。
もう一人の私が、朝からワインを飲みたいとウルサイのだ」
「いいじゃないか、ワインくらい」
以前であれば、弟にであれ内面をさらけ出すような真似はしなかったサガだが、聖戦後は諸々の反省からか、抱え込んで思いを隠すような事は少なくなった。カノンとしては話しやすくなり、とても助かっている。
「しかし、仕事前なのだぞ」
どうやらサガはカノンと話しつつ、内面でもう一人の己と揉めているらしい。
「そんな朝三暮四もどきで争うより、たまには飲みたい時に飲めばいいだろう」
心配するような内容でもなかったと、カノンは席に着き朝食へと手を伸ばす。
「サガが言っているのは冷蔵庫に入っているハーフボトルだろう?
あれ位なら割って飲めば酔って仕事に障るほどでもあるまい。仕事は昼からなのだし」
そう言うと、サガは額から手を離してカノンを見つめた。
「しかしそうすると、仕事後に飲むものがなくなる」
「しょうがないだろ、飲んだのだから」
「アレは、仕事後には冷蔵庫にあるお前のビールを奪えばいいと言っている」
「ふざけんな!」
カノンがサガの分の珈琲カップをぐいと押し出す。
「朝はこれで我慢しろ」
サガはカップとカノンの顔を交互に見ていたが、やがてニコリと笑うと「そうしよう」と答えた。


2008/9/18

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