アクマイザー

因果応報


自ら死を選んだサガは、他の人間よりもタナトスとその影響に弱い。
しかし、サガの中でも黒の意思を持つほうの人格は死を選んでいない(ある意味死んだ事もない)ため、タナトスの影響を受けなかった。
相反する性格そのままにタナトスを拒絶する黒髪のサガを、タナトスは怒るでもなく面白そうに眺める。
「相変わらずお前の方は、色気のないことだ」
「そう思うのであれば、私に構うな」
紅く燃える瞳で睨み返すも、タナトスは動じない。それどころか、なおもからかうように顔を覗き込む。
「半魂をオレが捕らえているのが許せぬか」
「……」
その問いを無視した黒サガの反応そのものが、タナトスへの回答であった。
「クッ…ハハハ!」
「…なにが、おかしい」
怒りを押し殺した声を黒サガが吐き出すと、タナトスは嘲笑の色を浮かべた。
「アレをオレへと差し出したのは、お前ではないか」
「なんだと」
「もう一人のお前は本来光の側にいた。だがそれを影の側へと突き落としたのは誰だ?お前の野望のために払われた犠牲の前で、あの者がどれだけ死を望んだか知っているか。それでもアレは死ぬ事が出来なかった。女神が戻るまでは聖域と地上を守り、万が一にも女神が戻らぬときには、己が聖域を率いて聖戦に備える義務があったからだ。13年間かけて、胸の奥でアレはオレに焦がれ続けた。女神の前で自死を選んだ時、アレにとって死は歓喜と同義であった」
「違う。あの歓喜は女神に対するもの」
「同じだ。『サガの死』によって、小娘は真の意味で聖域の女神となったのだから…忌まわしい事だがな」
だから、とタナトスは続ける。
「お前がオレに今更腹を立てるのは、滑稽なうえに勝手であるとは思わぬか」
黒サガは、ただ唇を噛みしめるしか出来なかった。

(2008/11/6)


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