アクマイザー

JUNK2008


◆一人どんぶり

サガは溜息を静かに零し、顔にかかる前髪をかきあげた。
「私が相手では不足か、タナトス」
目の前ではタナトスが口元に笑みを浮かべている
「そうは申さぬ。隠されたもう一人のお前がどのように私へ対するのか、見たいというだけだ」
黒の意思を持つ魂の方を、表へ出せとタナトスが言い出したとき、常ならばその命に素直に従うサガが珍しく躊躇した。
だが、この死を司る神が、言い出したことを簡単に変えたりはしないことを、サガはよく知っている。
「アレが表に出るのを、嫌がっている。それに…このような、コトの途中で…」
口ごもりながらも、請いをこめてタナトスへ瞳を向ける。
そう、サガとタナトスは先ほどから向き合い、手合わせを始めたばかりだった。
「…タナトス、アレにあまり無体なことをしないでやってくれないか」
「案ずるな。奴もまたサガなのだろう?可愛がってやるさ。お前にするようにな」
その言葉をどこまで信じてよいのか知れたものではないが、白い意思をもつサガはもう逆らわず内面に沈んだ。サガの面に苦渋の色が見えたかと思うと、ざあっと髪が黒く染まる。
次にタナトスを見つめ返した瞳は赤く染まっていた。
タナトスは満足そうに黒サガを見つめた。
「フ、ようやくお前を屈服させる機会を得たぞ」
対して、黒サガの無表情は逆に秘められた怒りを強く表していた。
「この下衆が…私を呼び出したことを後悔させてやろう。私はアレと違い貴様に遠慮などせん」


そんなわけで対戦中のチェスを再開させた二人だが、全世界と神を相手に策謀を巡らしてきた黒サガの巧みな戦略の前に、短慮なタナトスは簡単に撃沈し、渋面を作る羽目になったのだった。


2008/7/1
チェス対戦で、白サガはたまにわざとタナトスに負けてあげてるというプチ設定

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