アクマイザー

JUNK2008


◆大団円

「現状の俺では、まだ皆の上に立つ資格があるとは思えない」
蘇生後に教皇即位の儀を示唆されたアイオロスは、きっぱりと拒否した。
そして、彼を取り囲む黄金聖闘士たちと前教皇シオンをぐるりと見回す。
「謙遜しているわけでも、卑下しているわけでもない。ただ、13年分遅れている俺が、かつて指名を受けたからという理由だけで継げるほど、教皇の地位は甘いものではないと思っているのだ。今の俺は一番年下であり、皆より経験値も低い。死んでいた間の世界情勢にも疎い。無論それを言い訳にする気などないし、必ず追いつき全員に教皇に相応しい男として認めさせてみせる。しかし」
一息ついてアイオロスは続けた。
「それまでは、俺よりも相応しい者が聖域を治めるべきだ」
話を聞いたシオンが肩を竦める。
「ふん、それでお主は誰を推すのだ?」
「サガを」
英雄と呼ばれる少年は、間髪いれずかつて自分を貶めた相手の名を挙げた。
場にざわめきが走るなか、指名された青年…統合状態でこの場に赴いていたサガは、フッと笑った。
「私に教皇の権力を与えたら、今度こそ二度とお前にその座を返さぬかもしれんぞ?」
「その力があるのならば、それでもいいさ」
返すアイオロスも不敵な笑顔で、だが楽しそうに付け加える。
「俺はサガに負けるつもりはないけど」
チリ…、と小さな火花がとぶ。それは険悪なものではなく、暖かな信頼と正常なる競争心の証だった。

会話を交わしている二人から、少し離れた場所でデスマスクがこそりと呟く。
「あいつら、皆の前でイチャついてる自覚ねーんだろーな…」
ムウが隣で同意しつつ、二人の肩を持った。
「あれくらいなら良いじゃないですか?それに、自覚あってやらかす方が困りますよ」
「それもそうだ」
「今日はサガの人格が混ざっていて良かったですね。白いあの人や黒いあの人でしたら、きっと凄い愁嘆場や修羅場に…」
「わははは、それは逆に見てえ」

「「…そこ、聞こえているぞ!!」」

小声で話すも隠すつもりの無い蟹と羊の会話は、しっかり本人達の耳に届いていて、サガとアイオロスは揃って後輩を睨みつけたのだった。


2008/6/10

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