アクマイザー

JUNK2008


◆境界線

わたしは幼い頃から、自分が何者なのか判らなかった。

何故って、わたしの中の黒い影はいつも私に話しかけてきたし、カノンは当たり前のようにわたしの心へ言葉を使わずに入り込んできていたし、小宇宙の使い方なんて知らなかった頃は周囲の人間の思考を無意識に拾ってしまっていたりもしたし(後にそれはテレパシーと呼ばれる超常能力と知った)、その中でいったいどれが自分のこころであるのか、判別なんか出来なかったのだ。

わたしの頭の中は、わたしとわたしでない者の境界線が無かった。

そのうちにだんだんと世界には他人というものが存在するのだと判って来て、同じ顔のカノンですらわたしとは別人なのだと知ったけれど、相変わらず黒い影は「わたしもサガなのだ」と言う。どうしてもあの存在とは考え方が相容れないように思うのだが、それでもアレはわたしだというのだろうか。わたしは自分という自我に自信が持てない。

そのうちに聖域に見出されて、わたしとカノンは双子座の候補生となった。指針のないわたしにとって、女神の教えは判りやすかった。自分の価値観を基準に出来ぬのならば、女神を基準にすれば良いのではないかと、その時に思った。

しかし、そのようにしていたら、いつの間にかわたしは神のようだと称されるようになっていた。神と人との境界線も、割合といい加減なのだろうか。わたしの影は「お前が神になってしまえ」と囁く。

わたしは何を基準にわたしを決めたら良いのだろうか。


2008/6/6

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