JUNK2008
◆ざる
目の前で次々に空けられていくワインの瓶を見て、サガは青くなった。
「アイオロス、お前はたしなむ程度しか酒を飲まぬと言っていなかったか」
ロドリオ村住民たちから英雄へ届けられた10本の地ワイン。それは既に半分以上無くなっている。
「そうだぞ?だがワインは水代わりだろう。酒のうちに入らないと思うが」
言っている傍からクイクイ飲み干していく親友を見て、サガはようやく「たしなむ」基準が違うのだと気づくがもう遅い。
考えてみればサジタリアスはケンタウロスの守護を持つ。酒好きでもおかしくはない。
そこまで考えてサガはハッとした。
ケンタウロスは酒に酔うと、乱暴かつ好色な本性をみせるという。
「お、お前はあまり飲むな」
「なんで?」
「なんでって…」
気心の知れているアイオロスは、小宇宙でサガの意識の表層を読み取ると大笑いした。
「射手座はケンタウロスの例外、賢者ケイロンなんだけど」
それでも飲みすぎを心配している様子のサガに、グラスを置く。
「そうだね、俺が好色になって誰かさんに乱暴したら困るからねえ」
「なっ、そんな心配はしていない!」
「俺は小休止するから、その分もサガが飲んでね」
全然酔った様子のないアイオロスから自分のグラスへなみなみと注ぎ返されたサガは、なんだか丸め込まれているような気持ちになりながら、仕方なくそのワインへと口をつけた。
2008/5/3
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