アクマイザー

JUNK2008


◆もんじゃ

「モンジャヤキ?」
食材をテーブルに広げている星矢の口から出てきた単語を、サガは繰り返した。
「もんじゃ焼き。日本の食い物さ」
どこから持ってきたのか、ホットプレートまで用意されている。
「一緒に食べようと思って。小麦粉ならサガのとこにもあるよな?あと油とミニボウル2つ」
勝手に押しかけておきながら材料を要求するあたり、星矢もすっかりサガのことを身内扱いするようになっている。
「ホットプレートがあるということは、炒め物なのか?」
旧態依然の聖域に暮らすサガも、さすがにホットプレート位は知っていた。
「これは焼き物かな。小麦粉を水で溶いて、材料を加えて焼くだけだから簡単だよ」
星矢に説明され、それは甘くないパンケーキのようなものだろうかと想像しつつ、サガは棚のほうから油の入った小さな陶器と小麦粉を持ってきた。ミニボウルは無かったので、普通に丼型の深皿を利用することにする。
「小麦粉と水と材料を混ぜて、最初は具の方だけ焼いて、その上に小麦粉水をかける!」
お互いに自分の分を作ってみようねとエビやイカのぶつ切りを渡され、とりあえずサガはそれらをまとめて深皿に放り込んだ。星矢は早速手際よくかき混ぜて、ホットプレートの準備も始めている。
「じゃあ、お手本を見せるな」
そう言ってまずは油を敷く。しかしその時点で星矢は顔をしかめた。
「これ、オリーブオイルみたいだけど」
「そのとおりだが」
「それ以外の植物油、ない?」
「カノンが揃えていた気がするが、どの油がどの容器に入っているか判らない」
「…ま、まあいっか、これでも」
出だしからギリシアテイストになったもんじゃを、それでも星矢は器用に仕上げていく。
そしてサガにも同じように作るよう勧める。
サガは、見よう見まねで作成手順を真似し、材料をホットプレートの上へ落としてみた。
しかし完成したものは何故か焦げかけの厚い物体なのだった。
「もんじゃにはならなかったみたいだけど、ええと、お好み焼きが出来たね」
星矢のフォローがかなり苦しい。だがサガは出来栄えに満足し、それを自分の平皿へと取り分けた。
「オコノミヤキも日本の食べ物か?」
「うん」
「お前の国の料理かと思うと、作り甲斐があるな」
そう言って、切り分けたその物体をひとかけらフォークに刺し、星矢の口元へ運ぶ。
「味見を頼んでも良いか?」
その姿はさながら恋人のよう。

にこにこと言うサガに対し、星矢は
(シチュエーションだけは贅沢なんだけどなあ)
などと思いつつ、その微妙な物体を噛み砕いて無理やり飲み込んだ。


2008/4/12

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