アクマイザー

JUNK2008


◆弟二人

「邪魔をする」
獅子宮へ押しかけてきたカノンは、守護宮の主が許可を出す間もなく、勝手に居住区部分へ入り腰を下ろした。
「何をしに来たのだ」
今は同僚となった双子座の片割れを、アイオリアは戸惑いながら迎え出る。
「ちょっとサガと喧嘩した。ここで暇つぶしさせろ」
カノンは機嫌の悪そうな表情で、茶を出せなどと図々しいことを主張した。
「デスマスクのところで良いだろう」
「それが留守だったのだ」
いつものごとく巨蟹宮へ押しかけようとしたところ、不在であったので勢いでその1つ上の獅子宮まで来たのだという。同じ顔でも品行方正なサガとは大分違うなとアイオリアが呆れていると、その思いを読み取ったかのようにカノンが睨んだ。
「お前とて兄の事では苦労してるんじゃないか?」
13年間は逆賊の弟と呼ばれ、今は英雄の弟と呼ばれ比較されるそのことを指摘する。
「まあ、何も無いとは言わんが、別に…」
アイオリアにとっては、兄の汚名が雪がれたのみならず、生き返ってきたというだけで望外の喜びであった。13年間はともかく、現在兄が英雄と呼ばれることに関しては誇らしい気持ちのみだ。
カノンもそこは判っているようで、問いの方向性を変えた。
「じゃあ、仮にだ。アイオロスが二重人格だったらどうだ」
「…はあ?」
「正義に篤く厳格なアイオロスという一面の裏に、凶暴で聖域の支配を望むような人格を秘めていたらどうする」
あまりに突飛な仮定だが、サガという兄を持つカノンからみれば、自分の境遇を置き換えてみたにすぎないことに気づき、アイオリアは律儀にそれを想像してみることにした。
「兄さんが黒髪化して、聖域を掌握するってことか?」
「まあそんなとこだ」
「…結構格好いいかも…」
「はあ!?」
今度はカノンが呆れた声を上げる。
「お前、一体どういう想像したんだよ!脳の中覗かせろ!」
「幻朧魔皇拳使おうとするな!プライバシーの侵害だ!」

ブラコン二人が揃うと、気が合いそうで微妙な会話になることも多いのだった。


2008/4/15

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