アクマイザー

JUNK2008


◆幸福の疵

サガが俺の弟であるアイオリアと付きあいだした…という噂を最初に聞いたとき、俺は一笑に伏した。弟の気性を思うとありえない話だと思ったし、いま考えると信じたくないという気持ちもあったのだろう。
だがサガ本人から、まるで世間話をするときのような気安さで報告を受けたときは、流石に笑うことが出来なかった。
「俺だって君のことが好きだ」
掠れた声を搾り出す。
サガは柔らかく微笑んだが、それだけだった。
「私も君のことが好きだったよ」
過去形で語る語尾が俺の胸を突き刺す。
サガは何か大切なものを語るがごとく、瞳に幸福の色を浮かばせていた。
「アイオリアは私を好きだとは言わない。けれども必要だと言ってくれた。私の償いが必要だと」
サガが求めていたものは、無償の愛よりも、もっと人間的な何かであったのだと、今更知ってもどうにもならない。
「そうか…幸せにな」
ちっとも心の篭らぬ祝福の言葉を口に乗せたとき、背中から黄金の翼が萎びて消えていった。


2008/3/7

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