アクマイザー

JUNK2008


◆自然災害

サガはあまりモノを望まないタイプだが、ひとたび何かを願った時の想いの強さときたら、双子の弟のオレからみても空恐ろしい程だ。
堤防をも決壊させる奔流のごとく、深く激しくただひたすらに、その想いはあらゆる障害を押し流していく。
戦いを好む性質ではなかったというのに、平和を守るための力が必要と思えば聖闘士を目指し、信じられぬほどの努力とひたむきさでもって黄金聖衣を手に入れた。

その想いの強さのままに正義を愛し、女神を愛し、地上を愛したサガ。
覇道を目指したもう一人のサガも、同じだけの強さで己を貫いたという。

「そのサガに愛されることの充足感が、お前に判るか」
カイーナ城の執務室に置かれた大きなソファーへ横たわりながら、オレはラダマンティスを見た。
「判らんな。仕事の邪魔をしにきた恋人が、目の前で他の男へのノロケを聞かせてきた時の気持ちなら大層判るのだが」
奴は邪魔と言いながら、ペンを走らせる仕事の手も止めない。
「あの強さでオレだけを見るんだぜ?幼かったオレが、そんな想いを向けられて抗えるわけないだろう」
ほんの4〜5歳の頃の、本当に幼い頃の話だがな。と付け加える。
「あの頃、サガにはオレしかいなかったし、オレにもアイツしかいなかったから」
「ブラコンの原因を兄のせいにするのか?」
呆れたようにラダマンティスが口を挟んできた。
「ああ、あいつのせいだ。オレにとってサガはどうしようもない自然災害みたいなもんだ。オレがサガに流されるのは仕方が無い。だから」
そう言いつつ、立ち上がると、ラダマンティスの目の前の書類の上に手を置く。
「オレがサガの波に飲み込まれていたら、お前が救助に来い」

最大限のサービスでそう言ってやったというのに、ラダマンティスときたら更に呆れたように
「お前の兄はどれだけお前を甘やかしたのだ…」
そう言いながらオレの頭を撫でて子ども扱いしただけだった。
年下の癖にこの余裕が時折むかつく。

オレはぶつくさ言いながら、仕方なく恋人の仕事が終わるのを待った。


2008/3/5

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