アクマイザー

JUNK2008


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◆割れ鍋に割れ蓋・後編
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巧妙に調査の手をかいくぐる犯人の手口に、二人は考え込みます。
「これはもうアレしかないな…」
「オレは嫌だよ」
「私だって嫌だ」
言い終わるや否や、二人は光速ジャンケンを始めました。
これはもう囮捜査をするしかないって事なのですが、二人とも自分が囮役になるのは避けたいのです。拳で決めずにジャンケンで決めるところが、聖闘士にしては文化的です。

ジャンケンに負けたサガは、しぶしぶセーラー服を着て、犯人の現れそうな道を練り歩きました。
三つ編みにしたおさげに白のソックス、学生かばんを持って歩くサガは、どこからどうみても身長188センチのガタイの良い素敵な女子高生です。28歳ですが。
嫌がっていても、やるからには完璧を目指すのがサガらしいところでした。
旅先でキングサイズのセーラー服を手に入れるのは一苦労だと思われますが、そこは次期教皇たるアイオロスの外交手腕が発揮されています。
そのアイオロスはこっそりサガの後をつけながら、犯人が現れるのを待つという寸法です。
頼もしいですが、一見すると単なるストーカーのようです。
(女子高生サガの姿を見れば、犯人でなくたって引き寄せられるに決まっている!)
アイオロスは、犯人以外まで集まってきたら囮捜査の意味がないことは忘れていました。
しかしそんな穴だらけの計画でも、ちゃんと犯人は現れたのです。

サガの前に立ちふさがったのは、ポセイドンの矛を持つ海将軍姿のカノンでした。
やはりカノンが犯人だったのかと衝撃を受けている二人の前で、カノンが矛を振るいます。
カノンであればサガに傷をつけないだろうと思っていたアイオロスは慌てて叫びました。
「サガ姫、逃げろ!」
スカートをひらめかせて攻撃を避けるサガ姫と、彼を姫と呼び助けるアイオロス王子。
彼らは二人だけの世界を構築し、何か別のプレイをしているかのようでした。
危機的状況だというのに、黄金聖闘士二人の脳内はお花畑というか余裕です。
しかし、流石に海神の神器の前では押され気味になってきました。
カノンが笑いました。
「サガよ、お前からも奪ってやろう」
その台詞を最後まで聞かずに、アイオロスを置いて光速で逃げ出すサガです。
カノンは『声を』奪うぞと言ったつもりだったのでしょうが、何か別のモノを奪われる危機感を覚えたのです。
サガは鈍感ですが、黄金聖闘士だけあって防御本能だけは無駄に発達しておりました。残されたアイオロスは果敢に戦ったものの、矛の力によってスニオン岬に封印されてしまいました。
「ウワーハハハハハ!」
勝利に高笑いするカノンの笑い方は黒サガそっくりで、確かにDNAが同じなのだと言う事を実感させられます。

そこへ、どこからか魚の焼けた良い匂いが漂ってきました。
思わず匂いを辿っていくと、七輪でサガが魚を焼いています。
サガはこちらを振り返ると、何事もなかったようにニッコリ微笑みました。
「お前も食うか?」
白魚のような指で、串にさした焼き魚を差し出したサガの微笑みの優しく神々しいことといったら。
「あ、ありがとう」
思わずカノンが片手の矛を離してその串を受け取ったとたん、サガは矛を奪い取りました。
「ククク、簡単に人を信じるとは馬鹿め!」
いつの間にかサガの髪が漆黒に変化しています。
長い髪を潮風にたなびかせ、黒サガは矛でカノンの頭をしばき倒しました。
弟にも容赦ありません。流石サガ。
焼き魚を口にする事も無く昏倒したカノンは、黒サガの足元で姿を変えていきました。
「…愚弟ではなかったのか」
そこに現れたのは、リュムナデスのカーサでした。


いっぽう、矛の力によってスニオン牢に飛ばされたアイオロスは、その中でカノンを見つけていました。カノンはアイオロスへ送られてきた手紙を先に目にして、自分の身に降りかかった濡れ衣をはらそうと、一足先にこの港町へ来ていたのです。しかし、カーサの持つ矛の能力でスニオン牢へ閉じ込められてしまっていたのでした。
サガがカーサから矛を取り戻したことにより、スニオン岬の牢が開き、二人はサガのもとへ瞬間移動します。
二人が見たのは、既に黒サガによって叩きのめされた後のカーサでした。

カノンは海将軍筆頭として責任を感じ、アイオロスやサガに代わってカーサに尋ねました。
「何故このような悪さをしたんだ」
気絶から目を覚ましたカーサは、項垂れつつ訳を話します。
「町の連中と仲良くしようにも、ここではシードラゴンの昔の悪行のせいで、海将軍は悪者だと嫌われているんでさ…それならいっそシードラゴンの振りをしてトコトン暴れてやろうと思って」
アイオロスとサガがカノンを見ます。
犯人ではなかったものの、ちょっぴり要因はカノンにあるようです。
カノンはちょっと考えてから、アイオロスとサガを振り返り、爽やかに言い放ちました。
「勝手な言い分だが、カーサを許してやってくれないか。こいつは単に寂しかっただけだと思うんだ」
誤魔化す気満々です。
「ま、まあ、反省しているようだし、良いのではないか…?」
普段カノンに厳しいくせに、お願いされると弱いサガは、さっそく許してしまいました。
「オレもサガの珍しい格好見れたから満足かな」
アイオロスも私情丸出しです。
そんなわけで、アイオロスとサガはカーサを海へ流しました。
「きみの生きる場所は海の中だったんだ。二度と陸へあがってきてはいけないよ」
カーサは許されてホっとしながらも、この二人が聖域の次期教皇とその補佐かと思うと、少しだけ地上の未来が心配になるのでした。


「さて、デートの続きをしようかサガ」
「ちょっとまて貴様。オレのサガとデートとはどういう事だ」
「カノン。お前こそ、この兄を置いて冥界のラダマンティスとデートに行くといったまま、行方知れずになっていたではないか…」
浜辺に残った三人が、小宇宙全開で繰り広げた聖闘士的スキンシップによって、カーサの悪戯よりもよほど大きな物理的被害が出たのですが、勿論それもアイオロスの政治的手腕によってカーサの仕業ということになったのでした。
めでたしめでたし。

2008/1/29
※おおまかにこんな話でした。ねずみ男のセーラ服姿を見たのは初めてでした。

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