アクマイザー

JUNK2008


◆氷の褥

夜が更けて、人馬宮にいとまを告げようとしたサガの手を、アイオロスが捕らえた。
「今日は泊まっていかないか」
さりげなさを装っているものの、これはアイオロスにとってすら勇気の要る誘いだった。
何故ならこの宮には寝台が1つしかない。
誰かが泊まるとなれば、その寝台を共有するか、どちらかが1枚の毛布で床に転がることとなる。
アイオロスは、サガを床に寝かせるつもりはなかった。勿論自分も。

聖戦後にアイオロスは気づいた。過去においてあれほど仲がよいと思っていたサガが、自分の前では決して眠らなかったことを。
それに気づいたのは、カノンやシュラたちと過ごすサガを知ってからだ。
サガは彼らの前では休む、らしい。
らしいというのは、それが伝聞でしかなく、自分は眠ったサガを見たことがないからだ。

一緒に寝て欲しい。
俺の傍でも安らいで欲しい。
信頼して欲しい。

それは祈るような問いかけだった。
サガは少し考えるようなそぶりを見せてから「君さえよければ、わたしは構わない」と答えた。

誰かと一緒に寝るのなんて、弟のアイオリアを寝かしつけたとき以来だとはしゃぐアイオロスを見て、サガも笑った。
(君になら寝首をかかれて殺されてもいい)
サガがそう思っていたことを、アイオロスは知らなかった。

2008/1/20


→おまけSSロス+黒サガ
隣で眠っているサガの動く気配で、アイオロスもまた目を覚ました。
そっと身体を起こして、サガを見る。
彼の眼下でざわりとサガの気配が揺らいだかと思うと、その髪が徐々に黒く染まっていった。
変化していく過程を目の当たりにするのは流石に初めてで、アイオロスは目を見開く。
「サガ?」
完全に髪が黒くなった頃を見計らって、そっと声を掛けてみる。
黒サガはまだ頭がはっきりしていないのか、面倒くさそうに視線をあげ、アイオロスに気づくと無言で固まった。
「…やあ」
どう声をかけたものか悩み、少し間の抜けた挨拶を向けたものの、黒サガは黙ったままだ。
怒り出すかと思ったら、何も言わぬまま背を向けて、布団を被りなおしている。
(猫のようだ)
アイオロスは思った。それも失敗をしたときの猫だ。
何かドジをやらかして固まった時の猫は、涼しい顔で失敗を誤魔化す。素知らぬ顔をしていれば、何も無かった事にできると思っているかのように。
(それでも、寝台に留まってはくれるのだな)
蹴り出される覚悟はしていたなどと言ったら、サガは怒るだろうか。
そんな事を考えていたら、見る間にサガの黒髪は薄まり、もとの色を取り戻していった。

黒サガが逃げずに(一瞬だが)閨を共にしてくれたことを喜んでいたら、翌日シュラが『黒サガは寒がりなので冬の夜中はまず布団から出ない』と教えてくれて、複雑になったアイオロスだった。

2008/1/23

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