アクマイザー

JUNK2006-2007


◆操縦方法


「夢は見るものではなく叶えるものだと言うではないか!」
「ほぉ、それが眠っている私の夢を勝手に幻朧拳で弄ろうとした言訳か」

朝から壁際に追い詰められているのがカノン、その目の前で物騒な笑みを浮かべ、腕を組んでいるのが黒サガだ。

「私に風呂掃除をする夢を見せようなどとは、随分と良い度胸をしているな、カノン」
「お前が掃除当番を毎回サボるからだろ!やれと言っても聞かないし!」

双児宮の広い風呂は、広いわりに二名しか使用しないので、それほど汚れはしない。それでも掃除をするのはなかなか手間がかかる。
黒サガが毎回うまく掃除当番から逃げるため、風呂を綺麗にしているのは現在カノンである。
昔は逆で、カノンが当番ごとから逃亡しては、サガがその後始末やフォローをする羽目になっていた。そんな過去を多少すまなく思うからこそ、カノンも黒サガの行動を我慢しているのだが、風呂に関してだけは兄の方が使用頻度が高い。カノンの不満は当然だった。

(にもかかわらず、小言を言う側の筈のオレが、壁際に追い詰められているのは何故だ)

答え。黒サガに常識は通用しない。
自問自答して導かれた回答に、カノンはくじけそうになった。

「はは、朝から仲がいいな」

突如、横合いから声がかかり、カノンはぎょっとした。アイオロスの声だ。
「貴様、いつからそこに」
黒サガも驚いた顔をしている。迷宮を張っていなかったとはいえ、双児宮へ気づかれず入り込むことの出来る技量は、さすが英雄というべきか。
アイオロスは殺気立つ黒サガへニコニコ手を振りつつ、カノンに言う。
「バカだなあ。サガは綺麗好きだから、カノンが風呂掃除しないで放っておけば、嫌でも自分でするようになるよ」
「……あ」
カノンが手をポンと打つ。余計な事を言うなと黒サガが噛み付いた。
だが、アイオロスはどこ吹く風だ。
「いいじゃん、俺も掃除を手伝うからさ」
「貴様が私を、手伝う?」
「掃除終わったら、一緒に風呂で汗を流そうよ」
「…後半は断る」
「手伝うだけならOKなんだ?」

以前の兄であれば、前半も断っていただろうとカノンは思った。
非常識に対抗するには、こちらも常識に拘っていてはいけないのかもしれない。
なんだか仲良く見えないこともない黒サガとアイオロスを見ながら、カノンは自分もサガには強気で行こうと決意した。

2007/12/20

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