アクマイザー

JUNK2006-2007


◆溶かしたい

「その奥のいちごとラムレーズンのジェラードを1つずつ。ドライアイスは1時間分ほどでお願いする」
聖域用の買出しで共に街へ降りたサガが、横で珍しく自分用の買物をした。
あんまり嬉しそうに氷菓を頼んでいるので、つい俺は尋ねる。
「サガってそんなにアイス好きだっけ?」
「私ではなくカノンが…」
言いかけてサガは俺の顔を見た。そして店の奥へ再度声をかける。
「すまない、チェリーブランデーと白桃のを1つずつ別箱で追加してこの男に」
「えっ、いや別に請求したわけじゃないぞ」
慌てて横から口を挟むが、サガはこちらを見て笑いながら片目を瞑った。
「たまにはお前も、弟のアイオリアへ土産を持って帰ってやれ。それに私もお前の目の前で、自分達の分だけ買うのは気が引けるのだ」
こういうときのサガはすっかり兄の顔をしている。
いやでもサガとカノンは双子で同い年なんだけどな。
そんな俺の内面を知ってか知らずか、サガがニコニコしたまま話しかけてくる。
「なあ、アイオロス」
「何だ?」
「二人分買えるというのは、いいな」
なにげないサガの言葉に、一瞬言葉が詰まった。
何かを買うとき当たり前のように兄弟分を買ってきた俺達と違い、双子であることを隠してきたサガとカノンは、物を買うのにも細心の注意を払ってきたのだろう。
サガの上機嫌の理由が判った気がして、俺はわずかな嫉妬を追い払う。
こんな笑顔をされたら何も言えない。俺も柔らかく微笑み返す。
でも、それはそれとして、少しぐらい俺がこの状況に便乗したっていいよな?
「次は俺のためだけに何か奢って欲しいな」
「まったくお前は…奢られる事が前提なのか」
サガが呆れたような可笑しそうな顔で返事をする。それでも嫌とは言わない。その優しさに俺は付けこむ。
「そんなことは無いぞ。では逆に今回のお返しにサガへ俺が奢るってことで、どこかへ遊びにいかないか」
さりげなくさりげなく、デートのお誘いを持ちかけてみる。
「そうだな…お前の奢りというのは怖い気もするが、久しぶりに二人で職務と関係なく出かけるのも楽しそうだ」
多分サガはデートなんてつもりは無いのだろうが、了承をとりつけた者勝ちだ。

一番の難問は、14歳と28歳でどこに出かけるのかという事だった。
まあ蘇生後の年齢差のおかげで、サガの俺へのガードが緩んでいるわけだけど。
逆を言えば年下扱いで、俺の望む関係からは距離が遠ざかったともいえる。

店員からジェラードの入った箱を受け取りながら、離れていた13年間がアイスのように溶けて流れてしまえばいいのにと思った。

2007/8/8

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