アクマイザー

JUNK2006-2007


◆夢占い

弟と寝る夢を見た。
何故そんな夢を観たのかは判らないし、どうして自分がカノンの求めに応えていたのかも判らない。
ただ、無性に気持ちよくて充足したのは覚えている。
夢の中で私は、弟と自分を幽体離脱したような第三者として映画のように眺めていた。
黒サガとの分裂ともまた違った、夢ならではの現実味ある多角視だ。
普段の私であれば、血の繋がったカノンと寝る事に躊躇するに決まっている。
なのに、夢の中ではとても自分とは思えない行動でカノンと繋がった。
思い出して顔が赤くなる。
あれは無意識の私の願望なのだろうか。
いやいやそんな筈は絶対に無い。
絶対にないが、何だか不安になって図書館から夢分析の本を借りてきた。

「なに読んでるんだよ、サガ」
「なっ…なんでもない、ちょっと夢について調べ物があってな」
こんな時に限ってカノンが興味を寄せてくる。
普段は私の読む本になど見向きもしないくせに。
「夢調べんのにユングとかフロイトとかでなく、夢占い本…?」
カノンが呆れたような顔をしている。私だって恥ずかしいが、真面目に調べるのはもっと恥ずかしかったのだ。
「た、たまには良いだろう!」
「サガは占いを信じるタイプじゃないのに?」
「星占いも星見も似たようなものだ」
「まがりなりにも教皇経験者がそんな事言っていいのかよ。まあいいや、どんな夢を見たんだ?」
言えるわけがない。
「お前には…」
関係ない、と続けようとして口ごもる。そう言っては嘘になる。
このような些細なことであっても嘘は嫌だった。嘘はあの13年間でもう十分だ。
「オレが何だよ、途中で途切れると気になるだろ」
「うっ。その、お前の事を調べようと思って」
これなら嘘ではない…と思う。
カノンはふぅんと納得したようなそうでないような顔をしながら、私から本を取り上げた。
「オレもちょっと見てみようかな」
「お前が何を調べるというのだ」
「兄さんのことを」
ニヤリと意地悪く笑いながら私を見る。
ポーカーフェイスでいるつもりだったのに、意図せずして顔が赤くなった。
あんな夢のせいだ。
カノンは私に構わず頁をめくっていたが、見つけたらしい項目に目を通すとパタンと本を閉じた。
「何が書いてあった?」
「兄弟姉妹ってトコロを見てみたんだがな…」
肩をすくめてカノンは本を放り投げてくる。
「夢に出てくる兄は父や恋人の象徴だってさ。ホントかっての」
そんなことを言われるとますます意識してしまう。


後日、あの夢は黒サガの見せた嫌がらせだったと判明した。
しかし黒サガも私である事を鑑みると、やっぱり自分の願望である気がして、その度に私はその考えを水面下へと押し込めるのだ。


2007/7/27

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