アクマイザー

JUNK2006-2007


◆バレンタイン

双児宮の主と巨蟹宮の主は、守護宮が隣であることと、元叛逆仲間であることもあいまって、わりあい隣人付合いが深い。
13年間を思えば隣人付合いどころではない深い関係なのだが、周囲の人間から見ると真面目で正義感の強い白サガと、悪も厭わないデスマスクが仲が良いという事が不思議なようだ。

聖戦後はサガだけでなく、カノンも一緒に巨蟹宮へ押しかける状態となっている。
というのも、

・サガは相変わらず村民に慕われているため、食材の差し入れが多い。
・カノンは海界土産に新鮮な海産物を持って帰ってくることが多い。
・デスマスクは料理上手だ。

…といった理由により、食料のお裾分けがてら、双子揃ってデスマスクの手料理を振舞われる機会が一層増えたからだ。今日もカノンの持ち込んだ海老とムール貝でブイヤベースが作成されている最中だ。
カノンが肘を付きながら呟いた。
「あいつ、聖闘士をやめても、料理人でやっていけそうだよなあ」
隣で食事を待つサガが頷く。
「ああ。彼は料理に限らず、いろいろと世の中の事に長けていると思う」
「サガに『長けている』と言わせるほどってのは、そりゃ凄いんだろうな」
「それは誤解だ、カノン。私は物識らずだ…デスマスクを見ていると、特にそう思う」
「そんなものかな」
双子がとりとめのない会話に花を咲かせているうちに、デスマスクが鍋を持ち込んできた。
さっそく皆で食卓を整える。
「熱いうちに食えよ。今日のはサフランをたっぷり利かせたからな」
まだくつくつと音をたてるスープから、食欲をそそる匂いが漂ってくる。
デスマスクは双子にそれを取り分けてやりながら、軽くウインクした。
「サフランの花言葉は色々あるが、中でも”残された楽しみ”をお前らに贈る」
双子は顔を見合わせた。それは、荒涼とした冬に向けて、子羊が安らかに夢をみることができるようにフローラが咲かせた晩秋の花言葉。人生をかけた贖罪という冬へ向かう二人の罪人への応援花だった。

「お前はいちいちクサイんだよイタリア男が!」
カノンが照れ隠しにスープを乱暴にかきこんだ。
サガは微笑んでスープスプーンを手に取る。
「ありがとうデスマスク。料理も上手いし、お前を夫にした者は僥倖だろうな」
「そんならサガ、俺のところへ嫁に来るか?」
「二重人格でお前よりも背が高くてゴツくて罪人で男の嫁か」
「楽しませてもらえそうなので、むしろそれは大歓迎だぜ」

聞いていて、何となく天然サガとデスマスクの仲の良い理由が判った気がしてきたカノンだったが、とりあえず机の下でデスマスクの足を踏んで妨害をしておいたのだった。


2007/2/12

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