JUNK2006-2007
◆腕
生き返っても、シュラの落とされた片腕はそのままだった。
もう聖剣はそこに無いのだと言うかのように。
シュラ自身はそれほど気にも留めていなかったのだが、それを見た者は少なからず心を痛めた。中でも紫龍とサガはかなりショックを受けていたようだった。
紫龍はそれでも直ぐに、自らが引き継いだシュラの志を無駄にはしないと決意を新たにし、前向きにあることが山羊座への礼儀だと堪えていたが、サガの方は蒼白になって立ちすくんでいる。
あまりのサガの顔色の悪さに、却ってシュラが対応に困り果てていると、サガは突然、
『私がお前の片腕となる』と言い出したのだった。
それ以来、サガは麿羯宮に通いつめては、何かとシュラの世話をするようになった。黄金聖闘士の超常能力があれば、片腕をなくした程度では生活に困るというほどのことは無かったのだが、そうシュラが言ってもサガは納得しなかった。
そのうち、サガが麿羯宮にいることが当たり前となり、シュラもその生活が嫌いではなかったので、年上の双子座の好意に甘んじることにした。
そうなると、サガにくっついてカノンが乱入するようになり、いつの間にかデスマスクやアフロディーテもちゃっかり夕飯に相伴するようになった。
サガは相変わらずシュラにすまなそうな顔をしていたが、シュラはにぎやかな食卓を目の前にして、そっと女神に感謝を向け、にこりとサガに笑ってこう言ったのだった。
「サガ、俺は片腕を失ったが、もっと大切なものが戻ってきましたよ」
2007/1/16
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