アクマイザー

JUNK2006-2007


◆お年玉

「あけましておめでとうサガ。そんなわけで私にお年玉をくれないか」
新年早々双児宮へやってきたアイオロスの挨拶に、黒サガの光速拳がとびました。アイオロスもそれは予測していたのか難なくかわし、平然とリビングへ足を踏み入れてきます。
横で見ていたカノンは、二人の周囲から花瓶その他壊れ物をさりげなく片付け始めました。

「年明け早々金銭要求とは、良い度胸だサジタリアス」
「年明け早々褒められると照れるなあ。『お年玉』の意味を知っているなんて、サガは東アジアの風習に詳しいね。俺は女神に聞いたんだけど」
「あの小娘の入れ知恵か…貴様に与える物品などない。獅子宮の弟から貰えばよかろう」
「それが、お年玉は目上から目下に贈るんだって。なあなあサガ、俺に渡せば目上気分が味わえるぞ?」
「…貴様は私に喧嘩を売っているのか」

カノンは黒サガの神経の太さに常々感心していましたが、その黒サガにお年玉を要求するアイオロスの神経も並ではないと更に感心しきりです。ぶっちゃけ呆れているのですが。
正直関わりたくはなかったけれど、新年最初の1日を住居破壊で開始したくないので、カノンは仕方がなく仲裁に入りました。
「おいアイオロス、何で急にお年玉なんだ?金が欲しければシオンにでも請求すればいいだろう」
「いや、サガから貢いで欲しいんだ」
「目上から目下には貢ぐと言わないぞ…。だからどうしてサガなんだ」
「だって、お年玉の『たま』というのは元来は魂の事なのだろう?サガの魂を分けてもらえるのなら、私は1ユーロ分でも大事にする」

何だか風習の内容を色々勘違いしているようでしたが、アイオロスなりにサガと仲良くなりたい気持ちゆえの行動らしいと判り、カノンは肩をすくめて黒サガを振り返りました。
「払ってやれば?何かお年玉を渡すまで居つきそうだし、ごねるのも大人気ないぞ」
諭された黒サガは苦虫を噛み潰したような顔をしていましたが、しぶしぶ返答します。
「しかし、現金など私は持っておらん」
「じゃあ、別のタマを握らせれば?下半身の…」
カノンが言い終わる前に黒サガは光速で弟をしばき倒すと、その懐から財布を奪い、財布丸ごとアイオロスに渡しました。弟にだけは多少甘い黒サガも、シモネタは許しません。

「サガ…これってサガからのお年玉っていうのかな…」
アイオロスは不満なのかとても微妙な顔をしていますが、黒サガは
「三人が少しずつ不満な三方一両損だ、我慢しろ」
とニッコリ微笑みました。カノンは殴られた頭を抑え
(サガは何一つ損してないだろ!)
と心の中で突っ込んでいましたが、もちろん命が惜しいので口には出せませんでした。

かなり微妙にではありますが、黒サガとアイオロスの距離もちょっぴり近づいたようでした(そうでなければ、黒サガがアイオロスに笑いかけるなどありえません)。
カノンは手のかかる二人を眺めつつ、後で白サガに財布分のお年玉をねだろうと決意したのでした。

願わくば、今年も聖域と世界の皆にとって良い年となりますように。

2007/1/4

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