アクマイザー

JUNK2006-2007


◆人形は過去をトレースする

聖戦後のサガは、反省からか以前にも増して他人に優しく、自分に厳しくなりました。

改心した弟にも優しくなったので、カノンは最初こそ喜んだのですが、どうもその優しさに壁があるような気がしてなりません。
昔は自分だけには本音を見せてくれていたのに、今はアイオロスに対するのと同じようになめらかに優しいのです。つまりは他人に対する優しさです。
自分から兄が離れて行ってしまったような気がして、カノンは寂しくなりました。

アイオロスもサガに不満がありました。
蘇生後のサガが昔の友人のようにではなく、なんだか腫れ物に触るように、一歩下がった位置からアイオロスを立てるのです。自分はまだ教皇にもなっていないのに、配下としての態度を崩さないのです。
昔の内面を見せてくれなかったサガを思い返すと寂しくなりますが、今のようにあからさまに一線を引いた態度を見せられるのも寂しいものです。

二人はある日サガに詰め寄りました。
「サガ…私としては昔のように、対等に君と話せると嬉しいんだけどなあ」
「兄さん、どうもオレに遠慮していないか?普通に対応して欲しいのだが」
しかし、詰め寄る二人を見ても、サガは二人の言っている意味が全く判らないようでした。
首を傾げつつも、それぞれへこう答えたのです。

「アイオロス。私は君を殺しているのだから、今度は私が君へ命を捧げなければならない筈だ。対等というのならば、君が私を殺してくれれば、均等がとれて丁度良いのだけれども」

「カノン。私はお前を1度罰している。あの時の判断は間違っていないと思うが、私にその資格は無かった。だから私はお前に優しくしなければならないのだ」

以前のサガと似ているようでいて、全く異質な返事に二人は驚きました。
サガの面差しは相変わらず優しいのですが、その返事には心が無く、二人への態度は贖罪という理由からだけのもので、友情や愛情どころか謝罪の気持ちですらなかったのです。

そうして、二人はようやく気づきました。目の前の人間が、もうサガではないことに。
自殺した者の心までは、神も蘇生は出来なかったのでした。

その日再び、サガではないものによって、二人の心は切り刻まれ、捨てられたのでした。

2006/12/31

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