アクマイザー

JUNK2006-2007


◆不法営業根性(実話)

普段は人馬宮と獅子宮で別々に暮らすアイオリアとアイオロスです。
別々にといっても聖域内の近所同士ですし、黄金聖闘士の移動能力を思えばお隣さんも同然なのですが、任務が忙しいとなかなか落ち着いて話す機会もありません。
そんな中、久しぶりにアイオリアから兄のもとへと電話がかかってまいりました。
「ええと、元気かな?実は携帯落としちゃったんだ。それで困ってるんだけど、警察には届けたので、もしもそちらに連絡があったりしたら宜しく頼むよ」
「了解、お疲れさま」
小宇宙通信を使わずに電話連絡とは、13年の間に弟も文明の利器を使いこなすようになったではないか…と満足げなアイオロスは、なかなか兄バカなのでした。

そしてまた次の日。再びアイオリアから電話がかかってまいりました。
「携帯の連絡きた?あ、今は時間平気かな」
「いやまだ来ないな。お前こそ今は仕事中の時間だろう。大丈夫なのか」
「それが…ちょっと大丈夫ではなくて…うーん…困ってるんだ」
「どうしたんだ、何かあったのか」
「株…」
「株?」
「株をやってるんだけど…お金が足りなくて聖域のお金に手をつけてしまって…」

弟がそのような事をするなどありえません。
アイオロスはこの時点でやっと、これが流行の振り込め詐欺だと気づいたのでした。
今までずっと弟の声の判別も出来ずに話しているのもどうかと思いながらアイオロスは確認の為にちょっと質問をしてみました。

「そうか、とりあえず誕生日を言ってみなさい」
「え?何?祝ってくれるの?」
「ああ、祝ってあげるから言ってみなさい」
「こんな大変な時に誕生日どころじゃないだろう!」

敵もなかなか回答慣れしています。ナイス返答に思わずアイオロスはにこにこしています。

「そうだな、だが聖域の金を使い込むのはお前が悪い。お前が頑張って返しなさい」
「やっぱ俺が悪いのかな」
「うん、お前が悪い」
「そっか、そうだよなあ」
「まあ、がんばれ」

アイオロスは笑いながら電話を切りました。死んで詫びろと言わないだけ優しい応対です。 こちらが誕生日を聞いた時点で、相手も嘘がバレていることは判ったはずです。
もう2度とこの人物から電話はないだろうと彼は考えたのですが、どういうわけか切ったそばからまた瞬時に電話がかかってきたのでした。アイオロスは不思議に思いながらも電話を取りました。電話相手はいきなり先ほどの続きから話し始めました。

「なあなあ聞いてくれないか、聖域の金を使い込んだのは本当なんだよ」
「ふんふん」
「俺もアイオリアって言うんだ。同じアイオリアのよしみで助けて欲しいんだけど」

Σ(゜▽゜)そうきたか!?

敵はまったくメゲてません。素晴らしきこの営業根性。アイオロスは感心しました。
さりげなく「振り込んでくれ」という言葉を出さずにこちらから金を出させようとする会話テク。話の出だしに「時間大丈夫?」と尋ねる部分もポイントが高い。
ツボに嵌ったアイオロスは、つい声を上げて笑い出してしまっています。それにつられて、電話の向こうの偽アイオリアも何だか笑い出しました。いや、笑い事じゃないんだけどね。

「悪いが私も金がなくてな、気持ちだけ応援しておく」
「うん」
「あんまり他の人を騙してはいかんぞ」
「わかった」
アイオロスは電話を切った後、『見込みなしと判ると、挨拶もなく途中で電話をガチャンと切ってしまう昨今の営業電話よりは、礼儀正しい男ではないか』と思いました。

その話をシオン教皇に話すと、シオン教皇は呆れたように
「馬鹿め、そもそもアイオリアは携帯電話など持っていなかろう。その時点で気づけ」
と諭されてしまいました。そう言われてみるとそうでした。

ちなみにデスマスクの感想は「俺なら振込み先番号まで聞きだして、架空口座潰してやるかな」でした。

2006/12/7

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