アクマイザー

二人の射手座


「サガ!」
星矢はぶんぶんと手を振ってサガの処へ駆け寄った。着慣れぬ法衣(それも教皇の法衣!)の裾を踏まずに移動できるようになったのは、就任式前の特訓の成果だろう。
振り向いたサガは、星矢の姿をみて顔を綻ばせた。
「馬子にも衣装だな」
「ちぇ、似合わないのは自分でも判ってるよ」
「似合わないとは言っていない」
砕けた口調ながらも、サガは星矢の前へ膝を付いた。教皇となる者への敬意だ。
それを見下ろしながら、星矢は用件を切り出す。
「なあサガ、俺の補佐になってくれないか?」
まるで、いつもの軽いおねだりと変わらぬ口調だ。
流石にサガは目を丸くするも、微笑んで直ぐに頷く。
「謹んで拝命いたします」
「良かった!1度教皇を経験したまでの人を補佐にするのって少し気が引けたんだけど、サガが1番適任だと思うんだ。それに、正直なところサガが手伝ってくれたら、俺も嬉しいし」
元気な青銅聖闘士の後輩は、サガの過去についても遠慮なく口にする。けれども、裏表がないと判っているので、サガも気にする事は無い。
サガは心から嬉しそうに星矢を見上げた。
「わたしも星矢が教皇で良かった。お前以外が上に立ったときに、正直なところその地位を簒奪せぬ自信が無い」
笑顔の美しさに誤魔化されそうだが、本音を零しているのだと言う事は星矢にも伝わる。
(あー、今日のサガは統合サガだな)
サガは相変わらず黒かったり白かったり統合していたりと変化する。しかし、どのサガも星矢には優しい。
星矢は跪いているサガの頬を両手で包み込んで、自分の額とサガの額をあわせた。
「意外と自分の事はわかってないんだなあ。サガはもうそんなことしないよ」
「…星矢」
諭されたサガは視線を落とし、それから照れたように誕生日おめでとうと続けた。

しかし、そんな感動的な場面も、周囲からは『星矢に躾けられている美しい血統書付き大型犬』のようにしか見えていないのだった。

〜〜〜(オマケ)〜〜〜

「少し妬けたぞ」
星矢の去ったあと、アイオロスがサガに話しかけた。
「俺が教皇になっていたら、サガは地位を狙った?」
最初は、アイオロスが13年前のシオンの指定どおり教皇になるという話もあった。しかし、彼は己が既に死んだ者であることを理由に辞退した。同じ理由で黄金聖闘士たちが全て辞退したため、青銅聖闘士である星矢にお鉢がまわったのだ。
通常、教皇は黄金聖闘士のなかから選ばれるが、それについては黄金のランクを超えた神聖衣を纏う実力を持つ者として特例がおりた。
サガは肩をすくめる。
「ああ、むしろお前が教皇となった場合が1番危ない」
「ええっ、そうなのか?」
「仕方があるまい。お前が1番わたしをその気にさせる男なのだ」
思わぬ返しにアイオロスは一瞬黙り、それからサガをぎゅうっと抱きしめる。
「愛しているぞ、サガ」
「…お前も懲りぬ男だな」
「俺に誕生日のお祝いの言葉は?」
「それは散々昨晩伝えたろう」
「ベッドの中以外で!」
「………来年の当日に、また」
呆れたように零しながらも腕を振り解かないサガを、アイオロスは存分にそのまま堪能し続けた。


(2009/11/26)

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