アクマイザー

戦闘利用以外お断り
関連SS「着用状態で


双児宮の控室では、どんよりとした空気が漂っていた。
といっても、そこに居るのは双子座の闘衣たちだけだ。
黄金聖衣は太陽のごときその輝きを曇らせ、冥衣は闇の色を濃くしている。
双子座の黄金聖衣がぽつりと呟く(文中の表現はイメージです)。
「…いざその場になったなら、外れて逃げれば良いのではないか?」
それに対して、冥衣の方はどんよりと答える。
「女神の守護下にあるお前はそれが可能かもしれぬが、わたしは所属界の神に逆らえるかどうか…」
「不甲斐ない!主がタナトスに辱めを受けようとしているというのに、闘衣としての気概はないのか!」
「我が界の神を愚弄するな、あれは合意だ!」
「…ならばお前は、あの行為を許すのか」
「………嫌だ」
「………だろう」
双子座の聖衣と冥衣の困惑は、隣室でのタナトスとサガの会話が聞こえた事から始まる。こともあろうにタナトスは『闘衣を着たままのサガを抱いてみたい』などと言い出しているのだ。
黄金聖衣の方は断固として拒否をするだけでなく、主の貞操を守るつもりではいるものの、過去には数体の黄金聖衣を一瞬で砕いたタナトスだ。力での抵抗が出来るとは思いにくい。
まして冥界に属する冥衣のほうは、造ったのはハーデスであるとはいえ、その従属神に逆らえるかどうか。

「仕方が無い、主の方へ訴えかけるしかあるまい…」
「どうするのだ?」
黄金聖衣の言葉へ、真剣に冥衣が耳を傾ける。珍しく二つの闘衣の思惑が一致した空間であった。


サガは律儀に双子座の冥衣を纏ってエリシオンを訪れた。黒の輝きを誇る闘衣の上を、青みがかった銀糸の髪が流れ、その美しさに厳しい審美眼をもつタナトスの目も細まる。
タナトスの呼びかけに応え、サガは多少の恥じらいを見せながらもヘッドパーツを外し、サイドテーブルへと置く。
「やはりお前には冥界の色が似合うぞ、サガ」
「…そうだろうか」
そのまま顔が近付き、唇が重なりそうになったその時。突然室内に湿気と不穏な空気が流れ、サガは恐る恐る発生源たるそちらを見た。

そこには滂沱の涙を零している双子座冥衣のヘッドパーツがあった。

サイドテーブルの上から溢れ、床に零れ落ちるほどの滝涙がとめどもなく続いている。
サガは慌てて乾布を取りに走り、邪魔をされたタナトスはとりあえずヘッドパーツを床へ落して、その頭を踏んづけた。

(2009/12/6)


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