アクマイザー

珊瑚と薔薇2.5
※LC&エピG設定アリ


「それで、技の開発のために、大勢の兵士に迷惑をかけたわけだね」
黄金聖衣着用のサガがにこりと神スマイルをみせた。しかし、笑顔でもその威圧感までは隠せていない。
ほぼ地球の反対側から駆けつけた筈の彼は、息一つ切らしておらず、目の前では逃亡に失敗したカノンが迷惑そうな顔をして正座をさせられていた。
「あ、あの、カノン様は我々に稽古をつけてくださっていたのです」
横から恐る恐る先ほどの白銀聖闘士が口を挟むも、
「愚弟を庇ってくれて有難いが、自分より弱い者を相手に、怪我人目的で行なう組み手を稽古とは呼ばないのだよ」
と穏やかに(しかし強固に)返されると、返す言葉も無い。
カノンもその点に関してはサガの言うとおりだと思ったので、言い訳せずに説教タイムを我慢しているのだった。
サガは横を向いてアフロディーテのことも叱った。
「お前がいながら、何故このような振る舞いを許したのだ」 
お前がいながらというよりは、むしろコチラが首謀者である。にもかかわらず、アフロディーテは体育座りで正座を誤魔化していた。反省の色はない。
「海将軍の力を見せる事は、聖域の兵士たちへの良い刺激になります。あの程度の怪我で騒ぐような軟弱者は、この場にはおりませんし、何より貴方の弟の力を私は見たかった」
「アフロディーテ」
強い瞳でサガが元部下を見据える。
「それならば最初から趣旨を述べて協力を求めなさい。このやり方は、相手の意思を無視している」
口の巧みなアフロディーテに対しても、流石にサガのほうが一枚上手だ。
サガは溜息をつきながら二人に命じた。
「だが、完璧に治療を施したことは考慮しよう。彼らへの詫びとして今後一週間、訓練をみてやること。カノンはそれに加え、怪我人が出たときには無償で治療してやること」
わあっと雑兵たちの間から歓声があがった。
黄金聖闘士の稽古が歓迎されるのは当然として、カノンの治癒があれば思い切った訓練や技の出し合いも可能となる。カノンもまた治療の過程で治癒の技を磨ける。
サガらしい裁定だった。
サガは聖衣を外してオブジェ形態をとらせ、私服となってカノンの前に屈み込む。
「最高位にある聖闘士としての説教はここまで。兄としては…お前の新しい力が嬉しい。しかも、人の助けになる力とは」
そう言いながら両手を差し出し、己の小宇宙を流し込む。
アフロディーテがサガを呼んだそもそもの理由、「小宇宙の補充」が行なわれているのだとカノンが気づくまでは、しばしの時間がかかった。
カノンは赤くなりつつもその手を振り払わず、それは後でアフロディーテのからかいの種となるのだった。

(2009/1/28)


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