アクマイザー

牛師匠


女神の計らいによって記憶を無くし、幼く蘇ったサガは、弟子としては優等生だった。

識学においては一を聞いて十を知り、習った事を直ぐに応用できる聡明さを持っている。
小宇宙の扱い方や戦闘センスに関しては、教えているアルデバランが舌を巻くほどの筋の良さだ。なにより素直で師匠の言う事に逆らわない。

サガに唯一完璧でないところがあるとすれば、料理の腕くらいだった。弟子として師匠の身の回りの世話をするのも修行の一端だが、掃除洗濯に関してはそつないサガも、料理だけは何故か今ひとつなのだ。
しかしアルデバランもそれに関しては五十歩百歩であったので大して気にならないし、時折カノンやデスマスクが美味しい差し入れを持ってきてくれるものだから何の不自由もない。随分楽な師匠役もあったものだと思いながら、アルデバランはサガをセブンセンシズの発動に導いた。

そうして小宇宙が黄金レベルに達すると、サガはときおり人格変異を見せるようになった。
初めのうち、サガはその内面を恥じたのか黒サガの存在を隠そうとしたが、アルデバランはその二面性を自分や皆が知っている事を告げて、隠匿の必要のないことを諭した。
するとそのうち、黒サガも師匠が呼べば姿を見せるようになった。
彼も白サガと同様に、戦うすべや聖域の論理をアルデバランから学ぶ姿勢を見せるのだが、こちらのサガへ聖闘士としての考え方を理解させるのは、多少骨が折れた。黒いサガは実力至上主義とでも言うところがあり、納得のゆかぬ相手であれば、神であろうと従う道理は無いという主張を持っていたからだ。
ただ、昔と違い今は黒サガを抑えるに足るだけの成長した女神が聖域に在しており、黄金聖闘士たちも未だ幼い彼よりは戦闘経験も人生経験も勝っている。
そしてなにより地上に対するハーデスの脅威が失われている。
自分より力があると認める者に対しては黒サガも一目を置くため、以前のように自分の力だけを頼みに聖域を変えて冥界に備えようとまでは考えないようだった。

師に女神のことを聞く黒髪のサガは、無邪気とさえいえた。
「アテナはアルデバランよりも強いのか?」
「強いぞ。なにせ常勝の戦女神だからな」
「それは一度手合わせをしてみたい」
「ハハハ、お前はフェニックスと同じで男女平等思考か。だがそれはまず黄金聖闘士の誰かに勝てるようになってからだ」
ちょっと親馬鹿ぎみのところがあるタウラスは、ともすると女神へ対する黒サガの不敬発言を流し気味になるので、ムウなどが同席しているとため息交じりに二人へ注意するのが常だ。
しかし、黒サガはムウや他の黄金聖闘士に叱られてもしれっとした顔でいるくせに、アルデバランに叱られるとそれなりにしょげるようで、それがまたアルデバランの親馬鹿を加速させるのだった。
師弟が絆を深めていく一方で、ますます気が気でないアイオロスやカノン及び年中組が金牛宮に押しかける頻度が上がったわけだが、それを師匠目当てと勘違いした黒サガが対抗意識を燃やして彼らの目の前でアルデバランにべったりまとわり付くものだから、問題が余計ややこしくなったのは言うまでも無い。



(2007/4/26)

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