アクマイザー

育成(牛師匠と子サガ弟子)


聖戦後、シオンはサガの蘇生についての裁定を知らせるため、黄金聖闘士を集めた。
何事かと張り詰める空気の中、カノンも含めて11名のゴールドを前にシオンは次のように述べた。

「サガを生き返らせることに問題はないのだが、どうしても二重人格の矯正が出来なくてな。女神と相談の結果、黒い人格の発生時期まで年齢を遡らせて、教育しなおすことにした」

黒サガが発生しても、黒サガごと正しい方向に育成すれば問題ないという事らしい。
カノンは不満そうに顔を顰めた。
「オレが普通に蘇生されてるのに、何でサガがその処遇なんだよ」
「お主を蘇生したのは海神だ。アテナにはアテナのお考えがある」
女神の決定とあらば異論を唱える事もできず、カノンはしぶしぶ口を閉ざした。
シオンはゆっくりと黄金聖闘士たちを見回す。

「そこでだ。お主たちを集めたのは、サガの養育係を決めたいからなのだ」

多少他人事だと思いながら聞いていた黄金聖闘士たちも、ここでざわめいた。シオンは続けた。
「記憶をなくし、幼い子供として蘇生されるとはいえ、黄金の素質を持つ子供を白銀以下に任せるわけにもゆかぬ。弟子を育てた実績からいうと、適任は童虎にカミュ、ムウにデスマスクあたりか?」
それを聞いたアフロディーテは小声でぼそりと呟いた。
「その面子に任せてサガがまともに育つだろうか…」
その面子呼ばわりされた数人は軽くアフロディーテを睨んだが、他の者はおおむね同意らしい。シャカなどは率直に「無理だな」と頷いている。
「老師やカミュならば問題ないのではないか?」
ミロがフォローするものの、
「サガが今以上に脱ぎやすくなったり、踊りだすようになっても良いのか…」
と、シュラに突っ込まれると何も言えなくなっていた。
師匠経験者であるムウが遠慮がちにシオンに尋ねた。
「仮に私が引き受けたとして、黒い方のあの人が現れて実力で反発された場合、平和的な対処はいたしかねます」
サガの実力はそれだけ凄まじく、幼子であろうとサガの側に恭順の意思が無ければまともに教育などは出来ぬだろうという当然の心配であったが、シオンはそれを一蹴した。
「安心せい。師匠となる者はサガの蘇生時に最初に引き合わせる」
「どういう事でしょうか」
「鳥のヒナの刷り込みと同じく、最初に見た人間を親と思い懐くよう蘇生するそうだ」
それもアテナの決定らしい。
とたんにアイオロスが手をあげ、カノンが反発した。
「はいはい!私がサガを育てます!」
「ちょっと待て、何で兄弟がいるのに他人を肉親と思わせるんだよ!それならオレがサガを育てる!」
シュラも二人の後ろでどことなく立候補したさそうな顔をしている。
シオンは内心ため息を付きながら断言した。
「貴様らは余計な私情が入りそうだから却下だ。サガの貞操も危ないようだし」
「ええっ、子供のうちは乱暴しませんよ!」
「将来の為に、今のうちから理想的な兄に育てたいと思うのが人情だろ!」
アイオロスとカノンは、一瞬でシオンのうろたえるな攻撃により卓袱台返しされた。

「本当に貴様らには任せられんようだな!この二名以外で育成に向いていそうな者を多数決で採択する。それでよいか!」

そんなわけで強権が発動され、黄金聖闘士の皆に適任者を推薦させてみると、圧倒的多数で推されたのはタウラスのアルデバランだった。
「微妙じゃの…」
微妙なのだが、シオンにも文句のつけどころが見つからない。アイオロスやカノンですら『アルデバランなら…まあ…』という反応だ。その安心感と安定感が皆の推薦どころなのだろう。
人の良い牡牛座が厄介ごとを押し付けられたという部分も無きにしも非ずだが、当のアルデバランは覚悟を決めたのか快く承諾した。

修行地はブラジルではなく聖域でという条件のもと、サガはアルデバランに養育されることになったが、他の黄金聖闘士(特にカノンやアイオロスや年中組)もことあるごとに押しかけるので、師匠役は皆の持ち回りといった感だ。
子サガがあまりにアルデバランに懐くのを見てカノンとアイオロスは悔しがったが、他の人間に懐くよりは平和だろうというのが皆の一致する意見だった。
1年後、アルデバランの膝に寄りかかって眠る黒サガをみたとき、シオンは「もう大丈夫だろう」とサガへ再び双子座の聖衣を継承させる事を決定した。それは、贖罪のため海龍の職に専念したいというカノンの依願でもあった。

二度目の継承式で黄金聖衣をまとったサガが、真っ先にアルデバランへ聖衣を見せに来ると、本人以上に喜んだアルデバランが号泣し、意外なほどの親馬鹿っぷりを見せたのは後々までの語り草となったのだった。


(2007/4/22)

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