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あの後すぐに二人から用意を終えたという連絡が来て、私と葉瑠ちゃんはすぐさま彼女達の部屋の扉をノックした。
「ハルちゃんトモちゃん行こー?」
すると、奥から聞こえてきたのは元気のいい返事。
「オッケー、ちょっと待ってね!」
そして、次の瞬間にはガチャガチャと音を立てて開いた扉から顔を覗かせたハルちゃん。
「お待たせしました!」
続けてトモちゃんも軽く荷物を持って外へ出て来た。
「うし、じゃあ行こ!」
私たちはそんなトモちゃんの声を合図に動き出した。
そうして、やって来た食堂にはいつものメンバーがいてそこにいた音也くんが席を立ち上がり私達を手招く。
「あ、こっちこっち!」
私とトモちゃんは同時に顔を見合わせ首を傾けた。
「……どうする?」
「行く?」
私達はお互いに顔を見わせ同時に吹き込む。
すると、そんな笑い合う私とトモちゃんの姿に痺れを切らしたのは翔くん。
彼はズカズカとこちらへやって来てハルちゃんと葉瑠ちゃんの手を掴んで一足先にみんなの座る席へと連れて行ってしまった。
「ふふっ、んじゃあ私達も行くとしますか」
「そうだね」
私とトモちゃんはこちらに手を伸ばし混乱する二人を後ろから見つめ、みんなの待つ席へと歩き出す。
そして、席に付きなり身を乗り出してきたのはハルちゃん達を先にこの場に連れ去った翔くん。
彼は可愛らしい笑顔でこちらを見ながら自分を指さした。
「なあなあ、俺昨日とどこか違うんだけど分かるか!?」
私達四人は顔を見合わせ彼の顔をじっと見たあと何も分からないと首を振るう。
途端、ガクリと大袈裟に肩を落とし俯く目の前の彼。
彼は小さく呟いた。
「……やっぱみんな気付いてくれないんだよなぁ」
私は落ち込んだ様子の彼が少し心配になり声を掛ける。
「で、結局何が変わったの?」
翔くんはムッとした顔で私を見上げ告げる。
「ちょっと前髪切ったんだよ」
「……え、本当に?」
「嘘言ってどうすんだよ……」
彼は一気に机に伏せると鼻を啜り始めてしまった。
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