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大体の話を聞いて帰れない理由は分かった。
けれど、けれどもだ。
「帰って生徒と鉢合わせたら面倒だと言っても、私は同室の子になんと言えば?」
首を傾ける私とは違い一斉に口を噤むみなさん。
彼らはそれぞれ顔を見合わせ苦い顔をしたと思うとゆっくりと口を開き出す。
「……いっそのことその子には言うとか?」
「……信用出来んのか?」
「しかし、それ以外にはなかろう」
「……やよいちゃん、その子ってどんな子?」
最後の嶺二さんからの問いに私は今まで見てきた中での彼女の事を告げる。
「葉瑠ちゃんは、とても友達思いで時々色な勘違いをしたりするけど優しくて口も固くて唯一私が蘭丸さんに告げた話を全て知っている大切な友人です。信用はできます」
真っ直ぐにみなさんの目を見れば、それぞれ頷き合う動作をした彼ら。
「おい」
私は蘭丸さんの呼び掛けにそちらに顔を向けた。
「……もしも、今日のことを聞かれたら言ってもいい。なんなら俺が付いて行って説明してやる」
途端、驚いた表情をしたのは嶺二と蘭丸さんを除く私と美風さんとカミュさんの三人。
「んだよ」
蘭丸さんの機嫌が一気に悪くなり私たちは彼から視線をそらす。
「い、いえ……以外だったので」
「同じく同意見」
「まさか貴様がな……」
「まあ、保護者みてぇなもんだからな」
私が慌てて顔を上げた先には、ニヤリと意地悪気に私を見て笑う蘭丸さんがいた。
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