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何だかんだで、一十木くんもバスケの話をしなくなったところで私達はSクラスのみんなと集まるために食堂へ向かった。
そして、食堂へ着くなりこちらへ大きく手を振るのは翔くん。
「おーい!こっちこっち!!」
私達全員は思わず顔を見合わせ吹き出すとそちらへ向かって歩き出す。
「お待たせ」
「おう!」
私の言葉ににかりと笑う彼に四ノ宮くんが抱き着いた。
「翔ちゃんかわいいですぅ!!」
「ちょっ、那月離せ!!!」
毎度毎度起こるこの四ノ宮くんの翔くんを愛でる行為にはもうみんな慣れていて無視の方向で行かせてもらう。
「たーすーけーろー!!」
例え、彼が助けを求めたとしてもだ。
私は一ノ瀬くんに一度頭を下げると彼の隣に腰掛けてぼんやりと漫才を始めた一十木くんと松林くんを見る。
「あの……」
すると、突然話し掛けてきた隣に座っていた一ノ瀬くん。
私はそちらを向いて首を傾けた。
「どうかした?」
彼は一度その場で頷くと私から視線を逸らして一十木くん達を見詰めながら話し出した。
「貴女も次の試合に行くといいましたが大丈夫なんですか?またあの人たちがいるかも知れませんよ?」
予期していた質問。
私は彼と同じく一十木くんが松林くんと肩を組む姿をぼんやりと見つめつつそれに返した。
「まぁ、どうにかなるとは思う。何かあれば逃げるしね」
「そうですか」
ちらりと視線を寄越したそこには、呆れたように私を見て笑う彼がいた。
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