茄陳の町に着くなり目に入ったのは可愛らしい女の子に集る男達の姿。
私は小さな声で呟いた。
「何あれ、最悪」
同時に私の視線の先を見て眉間に皺を寄せる悟浄と悟空の二人組。
彼らはジープから降りるとズカズカとそちらへ近付くと見事に女の子を救出。
そして、三蔵が彼らへ向けて言った。
「おい、悟空!悟浄!あまり派手な行動をとるなっつっただろ!?」
私と八戒はそんな彼の行動に突っ込む。
「何言ってんの。もう既に目立ってるし」
「あははは、そうですよ。もう既に充分目立ってます」
考えても見ろ。
ただでさえジープに乗ってる人間の方が少ないのにそんなのに乗って、更には今のジープの上から叫ぶという行為。
どう考えても目立ってるだろ。
私はジープから降りて尻餅をつく女の子に近寄り片手を伸ばす。
「大丈夫?」
すると、彼女はハッとした表情で私を見上げて首をブンブンと縦に振るう。
悟空がそんな彼女を見て苦笑を浮かべながら近寄ってくると果物をひとつ拾って立ち上がった彼女にそれを手渡しながら告げた。
「俺ら、旅してンだ。メシのうまい宿屋教えてよ」
「駐車場完備だと嬉しいんですが」
笑顔で悟空の後ろからそう言った八戒。
彼女が果物を受け取りながら私を見た。
「そっ、それならウチが……」
「うん、じゃあそこに案内してくれるかな?」
「はい!」
彼女はいい笑顔で私の言葉に頷いてくれた。
少しだけ、ほんの少しだけそんな彼女があの子と重なって見えて泣きそうになったのは私以外誰も知らない。