▽ 1
私は死んだ。
それも医者でも分からない病気のせいで。
不治の病って若い人も患うものなんて知らなくて、しんどくなっても放置してたらバタンキューだよ。
あの時の自分を殴りたい。
失ったものは多かった。
家族、親友、友達、仲間……まぁ、他にも諸々。
でも、気付けば赤ちゃんだった私。
それでもなんとか頑張って、13歳と前の年齢の2年前までの歳になった。
因みに、私の今の名前は"黒子美桜"。
テツヤって言う双子の兄が一人と母さんと父さんの四人暮らし。
「美桜、どうしました?」
「ううん、何でもないよ」
私は一旦考えることを中断して、彼に笑顔を向ける。
彼もそれで納得したのか微笑むと、私の手を掴んで桜の下を潜る。
「みんな、どうしてるのかなぁ……」
小声でぼそりと呟いた言葉。
"幸せに暮らしてたらいいけど……。"
そんな考えが再び私の胸を閉める。
「美桜、美桜っ!」
「は、はい!!」
ガシッと掴まれた肩に私は心臓が飛び出るんじゃ?と思うほど驚いた。
同時にテツヤは心配そうにこちらを見つめる。
「本当に大丈夫ですか?帰りますか?今なら母さんたちも近くにいるはずですから……」
いつまでたっても過保護な彼。
精神的には私の方が上なんだけどな……。
私はばれない程度に笑顔を作って彼に向ける。
「大丈夫だって!」
彼はまた納得してない様子でこちらを見たが、私は彼と繋ぐ手を離して駆け出した。
「あっ、危ないですよ!?」
「大丈夫、大丈夫!」
……桜、ね。
私は降ってくる花弁に手を伸ばし、テツヤに見えない角度で微笑む。
「また、会いたいな」
いるかいないか分からないけど、届くといいと思いながら桜を飛ばす。
その日の空は、快晴だった。
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