横並びの年上年下
街角のケーキ屋のショーウィンドウにバースデーケーキが飾られていた。
ふと足を止めて、それに見入る。生クリームと苺、真ん中にHAPPYBIRTHDAYと描かれたチョコが飾られているだけのありふれたバースデーケーキだったけど、無性に懐かしかった。昔、母さんがオレの誕生日にこんなケーキ作ってくれたっけ。

「ミスミ!」

名前を呼ばれて振り返ると、慌てた様子のNが歩いてきた。
あっ、やべ。引き止めるの忘れてた。

「なにしてるんだい?隣を見たらキミがいなくなっていたから心配したよ」

「すまん。これを見てたんだ」

ショーウィンドウの中のバースデーケーキを指差す。
Nは怪訝そうな顔をした。

「ケーキ?手土産なら、キミの母親が作ってくれたものがあるだろう?」

「いや、そうじゃなくて、ただ懐かしかっただけだ」

Nは首を傾げた。
さっきの反応と合わせて、なんとも微妙な気分になる。

「そういや、お前って何歳?」

ぽろっと疑問が零れた。
言ってしまった後で訊かない方がよかったかと思ったが、Nは平然と答えた。

「22、だね」

「22!?見えねえ!」

てことはオレの6歳上!?
年上だろうとは思ってたけど、そんなに上だったのか。
改めてじっとNの顔を見る。童顔だからというのもあるが、雰囲気や普段の言動のせいで、成人してるようには見えなかった。
こいつといて、年の差感じることもなかったしな。

「なんか、裏切られた気分だ」

「そっちが勝手に誤解してただけじゃないか」

「そうだけど」

6歳差か。周りからは、オレとNってどういう関係に見えてるんだろ。
年の離れた兄弟、にしては似てないか。
じゃあ、先輩後輩とかか。友達とは思われないだろうな。
ま、なんでもいいか。周りになんと思われようと、今さらこいつが妙な友達ということに変わりはないし。

「年上っていっても、オレが面倒みてやってるしな」

「そうだっけ?」

「お前、オレがどんだけ迷惑かけられたと思ってんだ」

「それに関しては謝ったはずだけど」

「今の態度に反省の色が見えねえ」

裏手でNの頭を小突く。
やっぱり、6歳も上には思えなかった。
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