謎の場所
気付くと辺りは闇に包まれていた。
いや、それは正確ではない。
私の体や鞄、腰のモンスターボールは何故かよく見える。
だから、この空間は闇ではない。

では、この空間はなんなのだろう。

以前ギラティナと対峙した破れた世界と似ている気がする。
あそこと違って何もないけれど、感じるものはほとんど同じだ。
ここが破れた世界と同じような場所なら、どうやって帰ればいいのだろう。
どこまでも続く漆黒の世界に終わりなどあるのだろうか。

だが、ここで立ち止まっているよりは出口を探した方がまだましだと考えて、直感に従って歩きだした。
果ての見えない漆黒の世界をあてもなく彷徨うのは、気が狂いそうだ。

ふいに、どこからか足音が聞こえた。
果てしなく遠くから、いや、限りなく近くから。
足音の主を探して辺りを見回す。
だが、どこにも見当たらなかった。
ふと、足音が止んだ。次いで、見知った少年が現れた。

「ハル?」

「あれ?どうして、ひいちゃんがここに?」

そんなこと、私自身が訊きたい。
どうして、私はこんなところにいるのだろう。
どうして、ハルはここにいるだろう。
様々な疑問が過るけれど、今は友人が現れたことに安堵する。

「ハル、ここがどこかわかる?」

「ここは“謎の場所”。破れた世界と現世の間だよ」

自分から訊ねておいて、答えが返ってきたことに驚いた。
どうして、ハルはそんなことを知っているのだろう。
ナナカマド博士の助手をやっているからだろうか。

「出口はこっちだよ。ついてきて」

「うん」

はぐれないようにと手を繋がれた。
ハルは私の歩幅に合わせてくれるから歩きやすい。
これがアツシだったら好き勝手に突っ走っていくから、私はいつも引き摺られる格好になってしまう。
同じ年のはずなのにこういうところがハルは大人だ、と場違いなことを考えた。

しばらくすると、光が見えた。
ハルがその光を指差す。

「あれが出口」

「意外と近いんだね」

「普通に歩いても辿り着けないけどね」

じゃあ、どうしてハルはここまで辿り着けたんだろう。
光の中を進みながら思索する。
けれど、答えが得られるはずがなかった。

光の中を抜けると、おくりの泉にでた。
先程の疑問を訊ねようと思って隣を見ると、何故か一緒にいたはずのハルはいなくなっていた。
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