いつか空を飛べるのか
ホドモエジム戦の後、オレはポケモンセンターでポケモンたちを回復させた。
毎度のことながら、ポケモンバトルでの軽い怪我や疲労くらいなら一瞬で回復するんだからすごいよな。ボール越しに確認した相棒たちはすっかり元気そうで、後ろで指示してただけのオレの方がまだ疲れている気がした。

ポケモンセンターに来たついでに、併設されたショップで買い物をする。
明日にはフキヨセシティに向けて出発する予定だから、キズ薬とモンスターボールは多めに補充しておくか。途中に結構長い洞穴があるらしいし。ポケモンフーズはここよりマーケットで買った方がよさそうだな。ここのショップより少し高いが、マーケットのやつの方がポケモンたちの反応がいい。

あらかた買い物を終えてポケモンセンターを出る。
夕飯の時間まで結構あるけど、それまでどうするかな。ジム戦で腹が減ったし、どっかのカフェで軽くなにか食うか。マーケットに行くのもありだな。

そんなことを考えていると、前方に見知った人影が見えた。あっちもオレに気付いたらしく、駆け足で近付いてくる。

「ミスミー!」

「ベル、そんなに走ると、また転ぶぞ」

「だいじょーぶわぁ!?」

幼馴染のドジな方――ベルはオレの注意も虚しく躓いてたたらを踏んだ。
だが、なんとか持ち直して転倒は回避する。ベルのフタチマルのミーちゃんが支えようと伸ばした手を下ろしてほっと息をついた。

いつものことだが、よくなにもないところでも躓けるな、こいつは。
今回は転ばなかっただけ上々だけど。

また転ばれたら困るから、こっちからも近付いてやる。
「大丈夫か?」と一応訊いてやると、「大丈夫!」と元気に返してきた。本当に大丈夫そうだな。

「ねえねえ、ミスミ! あのね、もしかして、ひょっとしてジムにいってた?」

興奮気味にベルが身を乗り出して訊いてきた。
よくわかったな。ポケモンセンターから出てきたから、そう思ったのか?

「ああ。で、勝ってきた」

勝利の証拠に、バッグからバッジケースを取り出してクエイクバッジを見せてやる。
ベルは食い入るように見つめて、瞳を輝かせた。

「うわああ〜! これがホドモエのジムバッジ。いいなあ! すごいなあ!」

ここまで素直に感心されると気分がいい。ちょっと調子に乗りそうだ。
ベルはしばらく感嘆のため息を漏らしながら、穴が空くくらいクエイクバッジに見入っていたが、ふいにはっとしたように首を横に振った。

「ダメダメ! 感心してばかりじゃ。あたしもトレーナーだもの、こういうときは勝負よね!」

ぎゅっと拳を握ってベルは顔を上げる。その隣でミーちゃんも気合いを入れるように姿勢を正した。
正直疲れてるが、ここで断ったら男がすたるな。

「わかった、受けて立ってやる」

ポケモンバトルができるくらい開けた場所に移動して、ベルと向かい合う。
ここは前にチャールズとかいうやつとトリプルバトル――チャールズが考えた新ルールらしい――をした場所で、あまり人通りのない穴場だった。住民や旅のトレーナーがバトルすることも多いのか、ところどころ芝生が剥げて、木にも傷がたくさんついている。ここなら迷惑をかけることはないだろう。

「ベル、手持ちのポケモンは何匹だ」

「3匹だよ」

手持ちのポケモンは増えてないのか。ある意味マイペースなベルらしいな。

「じゃあ、3対3のシングルバトルでいいな」

「うん!」

ルールの確認をして、ベルトにつけたモンスターボールに手をやる。ベルも鞄からモンスターボールを――何故か手こずってはいたが――引っ張り出した。
ミーちゃんはすでに外にでてるから、先頭はチラーミィかムンナか。だったら、こっちはあいつをだしてみよう。

「いけ、グリ!」

「お願い、チーちゃん!」

オレが投げたボールから現れたのはモグリューのグリ、ベルが投げたボールから現れたのはチラーミィのチーちゃんだった。
グリが好戦的に爪を打ち鳴らして威嚇するが、チーちゃんの方は気にせず、頑張るねとばかりにベルの方を振り返って手を振った。チーちゃんも結構マイペースだよな。

「グリ、“じならし”!」

「チーちゃん、“あまえる”!」

まずはダメージを与えつつチーちゃんの素早さを下げようと“じならし”を指示するが、グリが地面を踏み鳴らす直前にチーちゃんがつぶらな瞳でグリを見上げた。くぅん、と甘えるように鳴かれ、グリの踏み込みが弱まる。威勢の削がれた足踏みでも地面は揺れ、チーちゃんもふらついたが、期待したほどのダメージにはなっていなかった。

予定通り素早さは下げられたが、こっちも攻撃力を下げられたのは痛いな。

「“つるぎのまい”で下げられた攻撃力を戻せ!」

「今のうちに“スイープビンタ”だよ!」

その場でグリが鋭く舞う。これで下げられた分の攻撃力は戻る。
その間にチーちゃんが距離を詰め、大きな尻尾でグリを打った。続けざまに何度も、今のうちに倒してやるという勢いで。
一発一発はさほど重くないが、積み重なれば結構なダメージになる。舞いながら何発かは受け流せたが半分以上はまともに食らい、舞い終わった瞬間、わずかに気が緩んだせいもあるのか、張り飛ばされて尻餅をついてしまった。
ぱっとベルの顔が明るくなる。

「チーちゃん、もっと!」

「チィ!」

ベルと同じく勝気な笑みを浮かべたチーちゃんがさらに畳みかけようとする。
瞬間、グリはチーちゃんの顔めがけて芝生ごと砂を蹴った。目に入ったらしく、チーちゃんが悲鳴を上げて飛び退く。

「ああっ!?」

「今だ、“かわらわり”!」

その隙にグリは飛び起き、硬く大きな爪を鈍器にしてチラーミィの脳天を殴った。短い悲鳴を上げ、チーちゃんが倒れる。
「チーちゃん!」とベルが心配そうに叫ぶが、起き上がる気配はなかった。

「チーちゃん、お疲れさま」

顔を伏せ、ベルはチーちゃんをボールに戻した。表情は見えないが、ぎゅっとボールを握る手が痛々しく見えて、慰めの言葉をかけそうになる。
だが、

「これぐらい大丈夫だよ。……きっと、多分だけど」

弱々しくも自分を奮い立たせようとする呟きが聞こえてやめた。
少なくとも、それは今のオレの役目じゃない。

ベルはボールを鞄に戻し、代わりに別のモンスターボールをだしてきた。次はムンちゃんだな。

「いって、ムンちゃん!」

予想通り、ベルが投げたボールからはムンナのムンちゃんがでてきた。ふわふわと浮きながらのんびりとした鳴き声を上げる。相変わらずマイペースなやつだな。
前から思っていたが、ベルの手持ちのポケモンはミーちゃん以外どこかしらベルに似てる。類友ってやつだろうか。

「よし、グリ戻れ」

「ぐりゅ!?」

得意気に胸を張っていたグリが弾かれたように振り返った。その顔は酷く不服そうだ。
こいつはバトルが大好きだからな。しかも今日はジム戦にでられなかったから、余計に溜まってるんだろう。

「頼む、ユラとシーマもバトルにだしてやりたいんだ」

わかってくれ、と諭すと、グリは渋々ながらも頷いてボールに戻ってくれた。自分勝手なところもあるが、他の仲間のことを思いやれないやつでもない。
ありがとな、とグリのボールを戻し、別のボールを掴む。タイプ相性を考えると、ここはユラをだすべきだな。

「いけ、ユラ!」

勢いよく投げたボールが開き、ヒトモシのユラが現れる。ユラは宙に浮かんだムンちゃんを見上げて身構えた。
緊張してるんだろうか。かなり固くなっている気がする。つい見かねて、そっと背中を叩いた。

「いつも通りやれば大丈夫だ」

「シィ」

ぎここちなくもユラは頷き、ムンちゃんをじっと見据えた。
トレーナー戦の経験はあまりないが、みんなでバトルの練習をしたり野生のポケモンと戦ってみたりして、ユラも強くなっている。タイプ相性もいいし、いつも通りやれば勝てるはずだ。

「ユラ、“シャドーボール”!」

「ムンちゃん、“みらいよち”!」

ムンちゃんの瞳が妖しく光る。だが、それ以外になにか起きる様子はない。自分の能力を上昇させたんだろうか?
その間にユラが黒い影の弾をつくってムンちゃんにぶつけた。むにゅっ、と短い悲鳴が上がり、ムンちゃんがよろめく。

よし、きいてる。
この感じだと、特防を上げたってわけじゃなさそうだ。
けど、これ以上なにかされるのは面倒だな。

「“ちょうはつ”」

「“つきのひかり”で回復して!」

オレとベルがほぼ同時に指示をする。
ムンちゃんの身体が柔らかな光に包まれた。自身を癒す清かな月の光。
だが、ユラが挑発的に手招きすると、急に目を怒らせた。同時に光も霧散する。さっきまでの穏やかさはどこにもない。“ちょうはつ”の効果で、ユラに攻撃することしか考えられなくなったようだ。
せっかくの作戦を崩されたからか、「えーっと、これってえ、かなりまずいよね……!」と目に見えてベルが焦り出す。流石に見かねたのか、ミーちゃんが落ち着けとばかりにベルの背中を軽く叩いた。

「えっと、じゃあ、“サイケこうせん”!」

「もう一回“シャドーボール”でトドメだ!」

ユラがつくった影の弾が放たれる。憤りながらムンちゃんも不可思議な光線を撃った。
だが、ユラの“シャドーボール”はムンちゃんの“サイケこうせん”も呑み込んで進んでいく。咄嗟に横に避けようとするが間に合わず、真正面から“シャドーボール”を食らってムンちゃんは地面に落ちた。

「ムンちゃん!」

ベルの呼びかけにもムンちゃんは反応しない。戦闘不能になったようだ。
思わず、よし、と小さくガッツポーズをしてしまう。ユラも振り返って口元に笑みを浮かべた。
その瞬間、

「シィ!?」

虚空から突然現れた光弾がユラに襲い掛かった。予想外のことに対処できず、もろに食らってしまう。舞い上がった土煙でユラの姿が見えなくなった。

「ユラ!?」

呼びかけるが返事がない。いったいなにが起きたんだ。
ゆっくりと、土煙が晴れていく。再び露になった芝生には、ユラが目を回して倒れていた。

なんで……。

わけがわからず、唖然とすることしかできない。
その時、ベルがムンちゃんを抱き締めて「やったね」と嬉しそうに呟いた。

「“みらいよち”はね、ほんの少し先の時間に念力の塊を送って攻撃する技なんだよ」

未来への攻撃、か……。
知らなかったとはいえ、完全に油断してた。くそっ。
自分に舌打ちしたくなりながらユラをボールに戻す。

「ごめんな」

あと少しでちゃんと勝たせてやれたのに。

ユラのボールを戻し、次のボールを構える。ベルもムンちゃんをボールに戻して、ミーちゃんに目配せしていた。あっちも準備はできてるみたいだな。

「頼んだよ、ミーちゃん!」

「出番だ、シーマ」

ベルの後ろに控えていたフタチマルのミーちゃんが前にでる。同時にオレが投げたボールからゼブライカのシーマがでてきた。
鬣を青く光らせてシーマが威嚇するように嘶く。ミーちゃんも鋭い眼差しでシーマを見据えた。

タイプ相性ではシーマが有利だ。
けど、ミーちゃんはベルの手持ちのなかでもとくに手強いからな。油断してたら、また足元をすくわれるかもしれねえ。ここは少し慎重にいくか。

「シーマ、“じゅうでん”!」

「ミーちゃん、“きあいだめ”だよ!」

シーマはその場で電気を溜めて特防を上げた。身体中を巡る電気が見るからに増大していく。
ミーちゃんも今は動かず、精神統一でもするような姿勢で深く息を吸って拳を握った。確か“きあいだめ”は気合いを溜めて集中することで正確に急所を狙えるようになる技だったな。必中ではないにしろ、急所にあてられたら厄介だ。

「速攻で決めるぞ! “ワイルドボルト”!」

「“れいとうビーム”で地面を凍らせて!」

強く地面を蹴って稲妻のようにシーマが駆け出す。瞬間、ミーちゃんは冷気を発して自分の周りの地面を凍らせた。
シーマが到達するまでのわずか3秒、それで凍らせられたのはせいぜい1メートルほどだが、それで充分だった。“ワイルドボルト”がミーちゃんに届く寸前、凍った地面に足を滑らせてシーマが躓いた。そのまま気合いでミーちゃんにぶつかっていったが、本来の威力はない。
ちっ、せっかく“じゅうでん”して電力をいつもより上げたのに。

「“ふみつけ”!」

とにかく今は攻撃を続ける。
シーマは体勢を立て直すと、すぐさま前脚を持ち上げ全体重を乗せてミーちゃんを踏みつけた。だが、ミーちゃんの方も素早い。居合のようにホタチを抜き、シーマの蹄を受け止める。カンッ、とつるはしで硬い地層を叩いたような音が響き渡った。

「ミーちゃん!」

「フタッ」

ほっとしたようにベルがミーちゃんの名前を呼ぶ。ミーちゃんはそれに短く鳴くだけで応えた。
ぐぐっと体重をかけて、シーマがミーちゃんを踏み潰そうとする。ミーちゃんも踏ん張ってシーマを押し返そうとしていた。現状、2匹の力は互角に見える。

「シーマ、“スパーク”で押し切れ!」

「ミーちゃん、“シェルブレード”で押し返して!」

ほぼ同時に飛んだ指示に、2匹の瞳が煌めいた。ホタチから迸る水流がシーマの蹄を押し上げる。それを押しとどめるように青い稲妻がシーマの前足で弾けた。衝撃でシーマの前脚が浮き、ミーちゃんも後ろに倒れる。すぐにミーちゃんが起き上がろうとした瞬間、シーマが嘶き勢いよくミーちゃんの腹を踏みつけた。なにかを吐くような声がミーちゃんの口から零れる。

「ミーちゃん!?」

ベルの声に反応し、ミーちゃんが顔だけそっちに向ける。だが、すぐにがくっと四肢を投げ出して気絶してしまった。
どうだ、とばかりにシーマは嘶きを上げる。よくやった、と褒めてやれば、益々得意げに鼻を鳴らした。
それでも流石に疲れが滲んでいたから、労ってボールに戻してやる。

「……負けちゃったあ」

呆然とベルが呟いた。ミーちゃんをボールに戻して、頑張ったのにね、と顔を歪める。それは、どこか寂しそうな顔だった。
そんな顔をされると、やっぱり少し胸が痛む。ポケモンバトルは好きだが、最近はベルと戦ってもチェレンと戦っても楽しいだけではいられない。
だが、ベル、とその後に続ける言葉もわからないまま声をかけると、憂いを隠すようにぱっと明るく笑った。

「ミスミとはひさびさのポケモン勝負だったけど、ものすごーく強くなってるのね! あたし、強くないからじょうずに言えないけれど、ミスミはポケモンの気持ちよくわかっていると思う!」

「……お前も、前よりは強くなってるんじゃねえか」

「そうかな?」

ほんの少しベルの声に喜びが滲んだ。
オレは笑って頷いてやる。

「ああ。お前もちゃんと頭使えたんだなって、感心したぜ」

「もー! それじゃあたしが普段はなにも考えてないみたいじゃない!」

頬を膨らませて、ベルはぽかぽかとオレの肩を叩いてきた。地味にいてえ。
けど、こんだけ元気があるなら大丈夫か。ミーちゃんたちもいるし。

「いてっ……冗談だよ。強くなったと思ったのは本当だけど」

「ほんと?」

「ほんとだって」

手を止めて見上げてきたベルに今度は本気で頷いてやる。
ふふ、とベルは嬉しそうに破顔した。

「そうだ! このひでんマシン、ミスミにもわけてあげるね」

思い出したようにベルは鞄から――また手こずりながら――レコードのようなものを取り出した。ラベルには“そらをとぶ”と書いてある。
ひでんマシン――わざマシンと同じで、一瞬でポケモンに技を覚えさせることができる便利な道具だ。わざマシンもひでんマシンもいくつか持ってるけど、これははじめてみるやつだな。

「どうしたんだ、これ?」

「あのあと、パパがくれたの! きっと、いつでもすぐに帰ってこれるように! ってことだと思うんだけど……」

「親父さんらしいな」

過保護なベルの親父さんらしい考えだ。呆れるけど、このくらいは親として普通の心配なのかもしれない。少なくとも旅自体は認めてるわけだし。
ただ問題は、

「でも、お前、“そらをとぶ”を使えるポケモン持ってないよな?」

「そうなんだよねえ」

ベルの手持ちはさっき戦ったフタチマルのミーちゃん、チラーミィのチーちゃん、ムンナのムンちゃんだけだ。よほどのバグでもない限り空を飛べそうなやつらじゃない。

「だから、“そらをとぶ”を使えるポケモンも捕まえなきゃ。マメパトがいいかなあ。コロモリも可愛いよねえ」

「コアルヒーも可愛いぞ」

「あはは、そうだねえ」

どうしようかと悩む顔は、なんだか楽しそうで安心した。思い悩むことがあっても、ベルは多分同じだけこの旅を楽しんでる。

ベルはしばらく夢想に耽っていたが、ふいに「そうだ、チェレンにもわけてあげないと」と思い出したように呟いて顔を上げた。

「じゃあね、ミスミ! バイバイ!」

「おう、またな!」

手を振って去っていくベルを見送る。
その姿が見えなくなってから、オレは渡されたひでんマシンに視線を落とした。
“そらをとぶ”、か……。これを使えば、精神的な理由で飛べなくなったアルも飛べるようになるんだろうか。

つい気になって、その場でコアルヒーのアルをボールから出す。心地のいい陽気にアルはクアァとあくびのような声を漏らした。

「アル」

アルの前に膝をつき、“そらをとぶ”のひでんマシンを見せてみる。アルはクアーと不思議そうに首を傾げた。

「“そらをとぶ”、覚え――」

「クアッ」

“そらをとぶ”を覚えてみないか、という誘いはひでんマシンを持つ手を突かれて遮られた。
アルはいつもののんびりした雰囲気から考えられないほど激しくひでんマシンを嘴で攻撃してくる。まるで親の仇にでも会ったような態度だ。ものすごく痛い。手が赤くなってきた。

「わかったわかった。そんなに嫌なら飛ばなくていい」

「クアッ」

堪らずひでんマシンをバッグに仕舞って宥めると、わかればよろしい、とでもいうようにアルは鼻を鳴らした。
無理に飛ばせようとしたことはおろかリハビリもさせてなかったが、空を飛ぶことにここまで忌避感があったのか。“飛べない”ではなく、“飛ぼうとしない”と言っていたポケモンセンターの人の言葉の意味がようやくわかった。

「飛べなくたって、こんなに強いもんな」

「クア」

得意げにアルが胸を張る。
無理して飛ばなくたって、こうやって笑える方がずっといいよな。


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