[10]堕ちたら危険な暗がりで
「生きてるか?」
部屋に入ってきて開口一番そんなことを言ったそいつを見る。その表情は暗がりに隠れてよく見えなかった。
「笑いに来たのか」
今保健室には他に誰もいない。自分とそいつだけである。
「見舞いに来た友に酷い言い草だな」
言うとふん、と鼻を鳴らし、横に胡座をかいた。寝間着ということは、風呂上がりか。
「珍しいじゃないか」
「何。任務失敗でどんな顔をしているのか見に来ただけだ」
「…お前らしいな」
体の痛みはだいぶなくなったが、まだ動く気にはならない。黙っていると視界にその端正な顔が入った。覗き込んできたようだ。
「心配でたまらないそうだ」
誰が、と言いかけてやめた。
「何だ…いつもはいじめ倒している癖に、優しいじゃないか」
「本人はいつも通りのつもりらしいのだがな…あんな状態ではいじめ甲斐がない」
おいおい、と呟きつつ無意識に体を起こそうとする、が、鋭い痛みに顔をしかめた。
まだ暫くは寝たままになりそうだ。
「あのギンギン野郎に言っておいてくれよ」
伊作や新野先生は何も言わなかったが、自分が思っているよりも傷は深いようだ。
何度か感じた、暗闇に堕ちそうになる感覚を思い出す。
「会いに来んじゃねえぞ、って」
そう、こちらから行くまでは。
「…承知」
そして再び訪れた一人きりの静寂に、反抗するように目を閉じた。
――堕ちてたまるかよ――
あいつの情けない顔をぶん殴ってやるまで、絶対に。
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雨降り様よりお題をお借りしました。
4、5年生位かなぁ。
ちょっと消化不良…
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