「廻愛、何か新しい怪奇は見つかったか?」
「怪奇なんて、そう見つかるものじゃないよ。数奇」
いつもの教室、放課後のこのやり取りをするのは一体何回目だろうか。
私と数奇が出会ってから今日で40日、少なくとも40回はこのやり取りを繰り返しているだろう。
不良に絡まれていた私を、数奇が助けたのが始まり。私に霊感があり、除霊をやっていると知ったや否やこのように毎日話しかけてくる。
いつものようになんとかしなければと思った時に、私の携帯にメールが届く。
いつもの父親を通しての除霊依頼だ。場所は近くの廃病院。
いつもならその場でメールを削除している所だが、ちょうど良かった。
「近くの廃病院、悪霊が出るらしい。」
「・・・本当か?」
「依頼が来てる。かなり危険らしいから、私から離れないように」
そう言い私は、制服から小さな折り畳みの鏡を取り出す。
普段から鏡の面を出していると目立つし、なによりこっちの気力ももたないため、いつもは折り畳んでいる。
「・・・結局、除霊するのか」
「当たり前。危険だから。今から行くよ」
若干沈んだような数奇だったが、私がさっさと支度をし、教室から出るとその後ろをついてくる。
行く道の途中で数奇にこの依頼がどれだけ危険か言い聞かせながらようやく廃病院に到着する。
「見た目に特に変わりはないな・・・」
「見た目だけかもしれないから、注意して」
このような会話をしつつも廃病院に忍び込む。
中に入ると、ひんやりとした空気とは別の、何か背筋が凍るような寒気がした。
「気をつけて、何か来る・・・」
私が言いかけたその時、どこかで物が落ちる音、そしてすぐさま近くの窓ガラスが割れる。
「廻愛、あれ・・」
数奇が指した方に、黒いもやの様な物が。
霊に違いなかった。
「・・・面倒だけど、仕方ないか・・・」
そう呟きながら私は数奇の前に立ち、霊に向けてゆっくりと鏡を開いていく。


日常の非日常


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