「光樹!いい加減起きろって!!ホームルームだぞ!」

「…っ!あぁ、いつも悪いな、零慈」

朝、いつもの学校の机の上に突っ伏して寝ていた彼、徳川光樹は、彼の隣りの席であり、唯一の親友である羽宮零慈にいつもの様に叩き起こされていた。

「ったく…今日は何か悪い夢でも見てたのか?かなりうなされてたぞ」

「ん…なんていうか…思い出せないんだが…」

光樹が思い出そうと頭を抱えていた時、

「はーい、皆注目!」

彼の組の担任がちょうどというタイミングで入って来る。

「えっとー、まずはこのクラスに何と転校生が入ってきました!じゃあ、入ってきてください」

転校生という単語にざわつく教室内に、一人の女性が入ってくる。

肩まである黒い髪に、真っ直ぐな視線の瞳は綺麗な藤色。

「うっわー…すっげー美人じゃん…って光樹?」

周りの男女が見とれた様に歓声を上げる中、一人光樹だけは違う反応をしていた。

「……あの子、さっき夢で見た…!?」

夢の内容は殆ど覚えていなかった光樹だが、何故か彼女の事だけは鮮明に覚えていた。

「…えっと、じゃあ、自己紹介を…」

どこかうろたえた様に話す担任を横目に、転校生の女性は自分の名前を黒板に書き記す。

「……石田優衣です。よろしくお願いします」

淡々と透き通る様に話した彼女、優衣。

優衣は突然真っ直ぐにしていた目線をずらし、光樹の顔をじっと見つめる。
そのどこか離れられない氷の様な視線に、光樹はプレッシャーに押された様に目を逸らせなくなる。
暫くしたら優衣の方から目を逸らした。

「……光樹、何か、因縁でもつけられたのか?」

「…いや、何も…」

呆然とするしかなかった二人だった。




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