彼が目を開けた時に見たのは荒廃した町だった。

見慣れた高層ビルも、通っていた高校も、帰る場所である家もすべてが壊れたガラクタの様に崩れている。

彼の足下には倒れている人、人、人…

それは彼の一番の親友であれば、彼とは全く縁のない人達も。
しかし何故か全員に一度会った様な親近感を覚えている。

ふと目線の遠くに、誰か女性がいるのが見えた。
黒い髪を肩まで伸ばした彼女は、遠くから見ても分かるぐらいぼろぼろに傷ついていた。

ここで何が起こったのか…彼はまったく分からない。知るよしもなかった。

「…知りたいかい?」

男性にしては甘い、人を惑わせる様な声。

呆然としていた彼の隣にいつの間にかもう一人男性が。
黒い短髪、その金色の目は時計の様な模様が見える。

遠くで爆音が響く。

「このままだと彼女はじきに死ぬ…放っておいてもね。……さて、君はこの運命を変えたいかい?」

そういう彼の顔は無表情だったが、その瞳はどこか狂気を帯びた様に光っている。

「……君ならこの結末を変えることができる。この世界を救うことが出来るんだ…」

遠くで彼女が何かを叫んでいる。
必死に彼に手を伸ばしているが、その声は届かない。

「君が望んでも望まなくても、その時はやってくる。…いずれは会いに行くよ。君の…を…」

声が小さくなっていく。
彼の意識は闇に沈む………



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