導かれ、交差するは葉月


日が暮れ始める夕暮れどき、夏というよりは秋を思わせるような気温であった。

「・・・・くだらない・・・・・こんなことはすべて・・・」

そんなことを呟きながら人の混み合う道を歩く人物。

口にくわえている白く細い棒は棒付きのキャンディーらしく、時々頬の片方がむぐ、むぐと膨らんでいた。

一瞬灰色のようなその銀色の瞳は、若干光がないようにも見える。

その長い髪の人物、夢霧ルイはたった今、この夕闇高校の校門前に着いたばかりであった。

無表情にその高校を見つめるルイの後ろを、大柄な人物が通り過ぎた。

ふと後ろを振り向いたルイだが、人込み紛れ、その人物の顔を見ることは出来なかった。

ほんの一瞬だけ、ルイの目に生気が宿った。

それは8月31日の夕暮れ時の出来事。