大事な物は目蓋の裏


灰葉の夢日記の予知により、来宮が栗須の人質にされた事が判明した。
途中合流した祈綺を含めた7人で、出口に通じる3号棟の階段を駈け登るが、着いた時にはすでに誰もいなかった。
逃げたのかと思ったが、扉が開く音がしなかったため、隠れたと予想された。
隠れた栗須としげるを探すため、私と灰葉、崇藤にルイで校内を回る事になった。
残りの九条院と支倉と祈綺は出口を見張る役だ。
灰葉と一緒に行くのが嫌だと言う崇藤の意見により、二手に分かれて探す事になった。

「それじゃあ、あいかサンとルイさんはタケマルさんと一緒に・・・」

「・・・私は灰葉と一緒に行くから」


「えっ!?でもあいかサン・・・」

「灰葉を一人にするのは心配だし・・・ルイは崇藤さんと一緒でいいから」

「・・・わ、分かったのだ」

何とか灰葉を説得し、一緒に栗須を探す。

「ここもいない・・・灰葉!そっちはどう!?」

「こっちにもいないぞ!どこに行った・・・」

「う・・・本当にどこいったの・・・ってあれ?灰葉!?」


探している中、しばらく目を離した隙に、灰葉を見失ってしまった。

「ねぇ、灰葉!どこいったの!?ここ!?」

見失った灰葉を探し、写真部の部室に入った時、ふと床に落ちていた写真が目に入る。
拾い上げ、見てみるとそこには灰葉と栗須が写っていた。

「何・・・この写真・・・?っていうか、動いてる・・・!?」

しかもその写真は灰葉が移動するとそれに合わせるようにアングルを変えていた。

この写真に灰葉がいるのでは・・・そう思った私は、先の事をまったく考えず、写真に手を添え、



・・・・・・トプンッ・・・



「・・・っ!ここは、写真の中・・・」
この風景は、紛れもなくあの写真の風景であった。隣りの草の所には来宮が倒れている。
とにかく灰葉を探さなければ・・・
あくまでこの写真の中に「潜っている」私は、泳ぐようにこの世界を移動する。
商店街の内側に入った所で、栗須がスーパーの中に入って行くのが見えた。すかさず後を追い、しまっていた扉を抜け、棚の中に潜り込み移動する。
しばらくすると、棚の隙間から見慣れた黄緑色の髪が見えた。

「・・・灰葉!大丈夫!?」

「うわっ!!あいかサン!?って空を泳いで・・・」

「とにかく急いで、栗須が来る前に・・・」

「あぁ、分かっている・・・あいかサン、ここは危険だからこっち側に・・・」
灰葉は夢日記のあるページを私にみせ、そして自分の指を・・・

「うん・・・って灰葉!?あんた自分の指噛んで何する気!?」

「三つ目のパスワードを皆に伝えるためだ・・・それよりあいかサンも早く!」

そう言いながら灰葉は、血で壁に何かを文字を書く。
その直後、棚の上から栗須が刀で切りかかって来た。
それを灰葉は後ろに飛んで躱し、戸惑う栗須の顔面を殴った。

・・・二人の会話から、灰葉の夢日記に何か変化が起こったことが安易に予想できた。

「・・・いやっ、逆転して見せるぞっ!クリス!」

しばらくの会話の後、灰葉は自分の血で書かれた文字が書いてある壁を叩く。

「・・・これが俺達の力だ!クリス!」

灰葉が叫んだと同時、私の頭の奥に鈍い痛みが走った。




NEXT…