束の間の休息 気遣いの嘘


「・・・んっ・・・ここは・・・」

体がだるい。

私が起きて最初に思った事だ。

このままずっとここに眠りたいという怠惰感が私の心に纏わりつく。

でもずっと寝てる事は出来ないと思い、私はやっとのことでベットから起き上がる。

私の最後の記憶は、皆のために私の試練・・・才能を使い、皆が探していた紙を見つけた所まで。

気がついたら私の心を蝕んでいった「もう一人の自分」は消えていた。

もう彼女を抑える必要は無いと分かると少しホッとする。

「そういえば皆は・・・」

「・・・やっと起きたか、祈綺」

振り向くと後ろには生徒会長である祀木くんの姿が。

「あ・・・祀木くん・・・」

「気分は大丈夫か?」

「私はもう大丈夫。ところで皆は・・・」

「他の皆は、水沢を探しにいった。そろそろ帰ってきてもいい頃合だが・・・」

祀木くんはそういい、少し頭を押さえ、俯く。

「あの・・・祀木くんって、2年ぐらい前に、生徒会の書記をやっていたんですよね・・・」

「・・・そうだが・・・何故知っている?」

「はい、クリス先輩から聞いたので・・・」

「なっ・・・祈綺、君はクリス先輩の事を知っているのか!?」

「うん・・・小さい頃によく遊んでもらったりして・・・日本に行ってからも手紙とか送ってくれたんです」

「なるほど、だから僕の事を・・・」

さっきからどこか祀木くんの顔色が悪い。

「祀木くん・・・どこか調子悪いの・・・?」

「いや、平気だ。心配するな」

「・・・本当に?」

「あぁ・・・」

祀木くんは平気そうに答えるが、私には分かる。

「祀木くん、影化・・・っていうの、まだ治って無いんだね・・・」

「・・・っ!」

「治す為の薬はもってるけど・・・その薬は別の人・・・クリス先輩のために取っておいている・・・そうでしょう、祀木くん?」

「・・・当たりだ。よく分かったな・・・」

「嘘は見抜けるから・・・祀木くん、クリス先輩はここにいるの・・・?」

「あぁ・・・僕のせいでここに閉じ込められた・・・だから僕は・・・」

「祀木くん・・・」

本人は決意を固めた目付きをしているが、実際彼の本音は不安ばかりが溢れている。

「祀木くん・・・そんなに不安にならないで・・・そうだ、私、皆を探してきますね」

「・・・・分かった。そういえば四つ目のパスワードはUSBに入っていたそうだからな」

「何で、今その事を?」

「一応だ。水沢を探した後続けてパスワードの確認をするかもしれないからな。気をつけろ、祈綺・・・!」

「うん、ありがとう、祀木くんっ!じゃあ、行って来るね」

心配してくれた祀木くんに、笑顔で答え、保健室を出る。

「USBなら、パソコン室かな・・・電源は入るのかな・・・?」

そんな疑問を持ちながらもパソコン室に入る。・・・と

「うわっ!みさサン!?」

「きゃっ!あ・・・スミオ君」

急いでパソコン室から出てきたスミオ君とぶつかる。

「なんだ・・・?ってみさ!?お前、起きたのか!?」

「うん。そういえば皆急いでどうしたの・・・?」

「あぁ・・・みさサンにも話したいが、あいにく詳しく話している時間が無いのだ!」

慌てた様子のスミオくんに変わり、あいかちゃんが答える

「来宮さんがさらわれたの・・・栗須さんに!」

「・・・え!?」